バフェットは否定的? 株式分割が抱える「見えないコスト」(1/3 ページ)
株式分割を通じて個人投資家を呼び込もうとする企業が増えている。しかし、投資信託やETFの普及、実務コストの増加などにより、その意義は揺らぎ始めている。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手掛けたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレースを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務などを手掛ける。Twitterはこちら
足元の株高を受け、上場企業の間で個人投資家の取り込みを狙った株式分割が再び活発化している。
ニトリホールディングスは7月15日、10月1日付で1株を5株に分割すると発表した。良品計画は9月に1株を2株に、イオンは3株にそれぞれ分割する予定である。
日本では株式売買の単位が原則100株(単元株)であるため、1株当たりの株価が高い銘柄は、最低投資金額も高額になる。例えば1株1000円の銘柄であれば、最低でも10万円の資金が必要となる。新NISAのように年間の非課税枠が限られている制度では、個別株の価格が高すぎると、その枠内での投資が難しくなるケースもある。
こうした状況に対して、企業が株式分割を行えば、最低投資金額を引き下げることができ、資金力に乏しい個人投資家でも投資の対象としやすくなる。企業にとっては株主層の拡大につながる可能性があるため、分割には一定の合理性があるといえる。
「投資の神様」は否定的
しかし、米著名投資家で「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、株式分割に対して一貫して否定的な立場を取ってきた。
「ピザをいくら細かく切っても量は増えない」という相場格言にあるように、株式を分割しても企業の実体的な価値が変わるわけではない。あくまで見かけの株価が変化するだけであり、分割自体が企業価値の向上には直接結び付かないというのが同氏の主張である。
にもかかわらず、日本では株式分割が依然として重視されている。この背景には、日本特有の制度や市場構造が関係していると考えられる。
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