企業が陥りがちな2つの落とし穴
ID統合プロジェクトでは、さまざまな障壁に直面することが少なくありません。これらの障壁を事前に理解し、適切な対策を講じることがプロジェクト成功の鍵となります。
障壁1:共通ルールと個別事情のギャップ
共通ID基本ポリシーの策定にあたっては、多様なサービスが持つ個別事情を考慮しつつ、ID統合の本来の目的を見失わないバランスの取れた内容とすることが重要でした。しかし、この実現は決して容易ではありません。
ポリシーを策定するID統合プロジェクトチームと、共通IDを導入する個別サービスチームとの間で、主張にギャップが生じるケースがほとんどです。検討初期は反対者が少なくても、サービス側の導入に向けた検討が具体化するにつれ、ID統合プロジェクトチームとサービス側のギャップが明らかになることも多くあります(図3-1参照)。
ID統合プロジェクトは、総論賛成・各論反対に陥るケースが多いため、ポリシーの策定に苦労する企業がほとんどです。自社に適した進め方を見極め、個別サービスチームとバランスの取れたポリシーを策定することが大切です。
障壁2:既存ユーザーの移行が進まない
システム構築や社内調整に多くのリソースが割かれがちですが、既存ユーザーの共通IDへの移行が進まなければ、その効果は限定的になってしまいます。 社内調整に翻弄(ほんろう)され、ユーザー目線での検討がおざなりになると、せっかく構築した共通ID基盤が十分に活用されない事態に陥りかねません。
この障壁を乗り越えるためには、ユーザーが自ら移行したくなるような動機付けと、スムーズな移行体験の提供が不可欠です。具体的には、以下のような施策を検討すべきです。
・移行する動機を作る
共通IDへ移行することで得られる明確なメリットを提示します。例えば、移行者限定のキャンペーン実施や、共通IDでしか利用できない魅力的な目玉機能(限定コンテンツ、特別サービスなど)の提供が有効です。
・移行しやすい動線を作る
ユーザーが迷わず、ストレスなく移行手続きを完了できるよう、手続きフローを簡素化し、分かりやすい案内やサポート体制を整備します
このように、開発段階からユーザーの視点を取り入れ、移行促進策を具体的に計画し実行することが、ID統合プロジェクトの成功には欠かせません。
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