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「失敗したデータこそ宝」 AI面接官に全社向けAIツール、キリンHDが気付いた全社DXの真髄(2/4 ページ)

AI面接官に全社向けAIツールと、全社でDXを推進するキリンホールディングス。さまざまな取り組みから同社が学んだ、全社DXの真髄とは?

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AIと人間、それぞれの得意分野での役割分担

 2026年卒向けの採用活動を終えた今、根津氏は「面接の効率化という、当初設定していた目標は達成できました。AI面接官の導入後もこれまでと同等、あるいはそれ以上の採用成果が出ています」と手応えを語る。

 AI面接官の導入により効率化が進み、面接にかかる時間は短縮された。しかし根津氏は、それ以上に重要な成果があったと強調する。「私たちが本当に求めていたのは、多面的な項目を見極めることなど、人間が実現できないことを可能にすること。AIは常に同じ基準で、さまざまな項目を漏れなく評価できます。人間では一定の品質でこれを実現することは困難です」(根津氏)

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提供:ゲッティイメージズ

 こうして生み出された時間は、面接以外のセミナーやオンライン動画配信、1対1の面談など、学生との接点の質を上げる活動に充てられるようになったという。AIが得意とする「公平で網羅的な評価」と、人間が得意とする「深い対話や情報提供」という役割分担が実現したのだ。

社内外の不安を期待に変える3つの配慮

 AI面接官という新しい取り組みに対し、学生や社内からの反応は想定を大きく上回るポジティブなものだった。「正直なところ、『なぜAIに評価されるのか』といった懸念の声がもっと多いと予想していました。しかし実際には、学生自身が日常的にAIを使う世代ということもあり、抵抗感は想定よりもずっと少なかったです」(根津氏)

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人材戦略部 人材開発担当の根津拓登氏(編集部撮影)

 このポジティブな反応の背景には、3つの配慮がある。1つ目が透明性の確保だ。「エントリー前の段階で、AI面接を実施することと、その理由を明確に説明しています。『なぜAIを使うのか』『それが学生にとってどのようなメリットがあるのか』を事前に伝えることで、不安の軽減を図っています」(根津氏)

 2つ目がフィードバック機能の活用である。キリンHDでは、合否結果の前に、AI面接官から個別のフィードバックを提供。面接で良かった点や強み、改善の余地がある点などを具体的に伝えることで、同社の選考だけでなく、今後の就職活動全般に役立ててもらえるよう工夫している。

 3つ目が継続的な品質向上への取り組みだ。開発元との連携を密にし、常にAI面接官の精度向上に努めている。特にフィードバック機能は学生から高い評価を得ており、学生からは「受けて役に立った」というポジティブな声が寄せられているという。

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