「失敗したデータこそ宝」 AI面接官に全社向けAIツール、キリンHDが気付いた全社DXの真髄(3/4 ページ)
AI面接官に全社向けAIツールと、全社でDXを推進するキリンホールディングス。さまざまな取り組みから同社が学んだ、全社DXの真髄とは?
独自開発の生成AIツール「BuddyAI」
AI面接官の導入は、キリンHDが推進する全社的なデジタル戦略の一環だ。同社は「KIRIN Digital Vision 2035」を策定し、デジタルの力で食・ヘルスサイエンス・医の領域において価値創造の質、量、スピードを飛躍的に高めることを目指している。人材戦略部部長の福井氏は、デジタル時代における人的資本の考え方をこう語る。
「キリングループでは、人間の無限の可能性を信じ、人間性を尊重するという考え方を昔から大切にしています。デジタル化が進む中でも、この基本理念は変わりません。むしろ、AIによって定型的な業務から解放されることで、人間にしかできない創造的な仕事に集中できるようになります」(福井氏)。これを後押しする施策の一つが、同社が独自開発した生成AIツール「BuddyAI」である。
キリンHDは2025年5月、独自開発の生成AIツール「BuddyAI」を国内従業員約1万5000人に本格導入した。その開発の経緯について、デジタルICT戦略部部長の後藤氏は「技術進化のスピードは想像以上に速く、他社が成果を出してから追随していては完全に出遅れてしまう。この危機感から、昨年からBuddyAIの独自開発に着手しました」と振り返る。
「昨年から取り組んで良かったと思うのは、生成AIに推論モデルを搭載することで、単なる生産性向上だけでなく、創造性の文脈でも活用できる可能性が見えてきたこと。もし今から始めていたら、この段階には到達できていなかったでしょう」(後藤氏)
後藤氏によると、特にマーケティング部門での成果が顕著だという。「ペルソナ作成などの分析業務で大きな効果が出ており、年間3万9000時間の時間創出効果が見込まれています。マーケティング部門には約400人の従業員がいますが、ほぼ全員がBuddyAIを日常的に活用しています」(後藤氏)
目覚ましい成果だが、これは一朝一夕に実現したものではない。「当初は15種類ほどしかプロンプトテンプレートがなく、現場のニーズに十分応えられていませんでした。毎週のようにアジャイル開発を続け、現場の声を聞きながら追加していった結果、今では100種類以上に拡大し、『これがないと仕事にならない』という声まで聞かれるようになりました」(後藤氏)
マーケティング部門での成功体験は、全社展開への強力な推進力となった。先行部門での具体的な成果と改善プロセスが、他部門の不安を払拭し、導入への期待を高めたのだ。その結果、国内従業員約1万5000人全員への展開を完了し、約7割が一度は使用、ホールディングスに限ればほぼ100%の利用率を達成している。
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