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収益悪化が止まらない自販機業界 結局「人手」が必要なビジネスの現実小売・流通アナリストの視点(3/4 ページ)

「自動販売機=省人化」のイメージに反し、実際は人手に頼る構造を持つ自販機ビジネス。人件費の高騰や売上の減少が収益を直撃し、業界は今、大きな転換点に立たされている。

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オフィスや工場から消えた“ドル箱”

 さらに言うと、コロナ禍によりドル箱であったオフィス、工場などへの出勤者が減り、大きく落ち込んだ時期があるのだが、その後もオフィス、工場の自販機需要は戻らなかった。

 その理由については複合的なようなのだが、少なくとも、在宅勤務が増えたことでオフィス、工場の自販機が不採算となり、相当数が撤去されたことは、かなりマイナスに働いただろう。さらに、スーパーで購入した方が明らかに安いことに多くの消費者が気づいたことも大きい。加えて、コロナ後の急激な物価上昇で実質賃金が目減りし、自販機で飲み物を買うという行動自体が見直される傾向にある。こうして、自販機チャネルの売上は顕著な落ち込みを見せている。

 そして、これはコロナ後の急激な物価上昇により、実質賃金が目減りする人が急増した今、自販機で飲みものを買うという行動自体が見直しの対象とされていることだろう。そのせいか、飲料の自販機チャネルの売り上げは、顕著に落ち込みを見せるようになったのである。

業績に表れる「自販機依存」のリスク

 自販機への依存度が高い飲料メーカーとして、ダイドーグループHDが知られるが、この業績をみれば自販機の厳しい状況は明らかだろう。図表2は、自販機チャネルが8割を占めるダイドーの国内飲料事業の売上高、営業利益の推移である。


【図表2】ダイドードリンコ 国内飲料事業の売上高、営業利益推移

 2023年にはアサヒ飲料と自販機オペレーター事業の統合により事業規模が拡大しているが、それを加味しても売上の低迷と収益の縮小、そして直近では赤字に転落している様子が見て取れる。自販機の売上低迷と人件費の上昇が重なり、損益分岐点売上を下回った結果といえる。

 この現状を打破するための主な対策として、(1)不採算自販機の撤去、(2)デジタル自販機への入れ替え、の2点が挙げられる。(1)は利用者が減少した設置場所から自販機を撤去するという、極めて合理的な措置である。(2)は、販売状況や在庫をリアルタイムで把握し、補充を最適化するとともに、売れ筋商品に品ぞろえを切り替えるという対応である。

 これらの効果は以前から知られているが、自販機のDX化には多額の投資が必要となる点がネックである。市場縮小が予測される中での大規模投資には高いリスクが伴うため、業界横断での協調やインフラ共有が進む可能性が高い。

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