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収益悪化が止まらない自販機業界 結局「人手」が必要なビジネスの現実:小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)
「自動販売機=省人化」のイメージに反し、実際は人手に頼る構造を持つ自販機ビジネス。人件費の高騰や売上の減少が収益を直撃し、業界は今、大きな転換点に立たされている。
自動販売機は「全自動」ではない
実際、飲料業界では以前から、自販機オペレーションに関するメーカー間の統合が進められてきた。ダイドードリンコとアサヒ飲料の統合もその一例であり、過去にはJTの自販機事業がサントリーに譲渡されたケースもある。今後も各社はオペレーター統合を進めつつ、不採算自販機の撤去による短期的な収益改善を図っていくものとみられる。また、統合によって形成される業界横断的なオペレーターを通じて、DX投資の効率化が進められるだろう。
「自動販売機」という名称からは無人オペレーションを想起するが、実際にはDX投資が不十分な労働集約型ビジネスであるという点は、意外に思われるかもしれない。だが考えてみれば、インターネットが飛躍的な進歩をもたらしたのは情報の分野であり、物流においては依然として人手に大きく依存している。EC(電子商取引)の拡大により物流が逼迫している現状を見れば、その限界が明らかだ。インターネットがもたらす利便性は、モノの移動には及ばない。
自販機チャネルは小口分散型であり、仮にDX化を進めたとしても一定の人手は必要な商売だ。効率化によって損益分岐点を引き下げたとしても、そこに届かない設置場所は今後維持が困難になるだろう。全国のあらゆる道端に自販機が設置されているという日本特有の風景も、そう長くは続かないかもしれない。
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