クルマのヘッドライトは明るいほどいいのか 「まぶしさ」を解消する最新技術:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
クルマのヘッドライトは急速に進化してきた。明るさとデザイン性を高めてきた一方で、周囲のドライバーが「まぶしい」と感じてしまう問題も発生。それを解決する新しい技術も開発されている。今後も、より安全で広い視界を確保できるライトが出てきそうだ。
明るさとデザイン性を高めて進化
これはドイツのヘラ社が最初にBMWに搭載し、日本の自動車メーカーも、小糸製作所が開発したプロジェクターランプを採用し始めた。小糸製作所の製品の方がレンズ径が小さく、よりスタイリングの自由度が高まった。
しかし一気に小径化したことで、スタイリングを作り上げるデザイナーの感覚が追いつかず、しばらくはデザインに生かしきれていない状況が続いた。従来のハロゲンランプとグレードで使い分けたり、オプション扱いにしたりしていたため、スタイリングの変化は乏しくならざるを得ないのも当然だった。
またプロジェクターランプをデザインの特徴にしたことで不評を買い、マイナーチェンジでより普遍的なフロントマスクへと修正したクルマもあった。
かつてホンダは、インテグラを1995年にモデルチェンジしたが、プロジェクターヘッドランプだけのシンプルなマスクが不評で、2年たたずに薄型2灯のヘッドライトにマイナーチェンジしたことがある。写真はマイチェン前の前期型(写真:ホンダ)
その後、リフレクター(反射鏡)の形状を複雑にして配光を振り分けるマルチリフレクター式も登場する。
これは従来のハロゲンバルブを使い、射出成形(合成樹脂の加工法)で作られた部品を組み立てるだけで、従来のハロゲンヘッドランプと変わらないコストで幅広い配光特性ときらびやかな印象が得られる。フロントマスクの厚いミニバンがブームとなったこともあり、日本車ではマルチリフレクター式が急速に普及していった。
またプロジェクター式ヘッドランプの登場により、より強い光源のHIDも登場し、マルチリフレクターとHIDも組み合わされるようになる。
こうしてヘッドライトは、明るさとフロントマスクのデザイン性を高めるために進化してきた。
しかしそれに伴って最近、新たな問題が表面化している。対向車や後続車のヘッドライトをまぶしいと感じるドライバーが続出していることだ。この原因はヘッドライト本体だけでなく、ドライバーの特性も影響している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なぜテールランプがまぶしいクルマが増えているのか クルマづくりに欠けている視点
前走車のテールランプをまぶしく感じることが増えた。平時にリアフォグランプを点灯するのは問題外だが、ブレーキランプの規制変更によるデザイン性の追求という要因もありそうだ。環境性能や安全性だけではなく、周囲に配慮する工夫もますます必要になるだろう。
BYDの軽EVは日本で売れるのか 苦戦が予想される“これだけの理由”
中国のBYDが日本で軽自動車のEVを投入すると話題になっている。しかし、日本で売れるのかは微妙だ。その背景には、モノづくりに対する根本的な考え方の違いがある。品質に対する姿勢が従来と変わらないなら、日本ではあまり受け入れられないだろう。
「国産VS.アジアン」選ぶ理由が変わった タイヤ市場の二極化とメーカーの打ち手
クルマを支えているタイヤ。実績のある国産タイヤメーカーのほか、近年はアジアンタイヤも広まっている。安さと安心でユーザーの選択は二極化している。ブリヂストンやダンロップなどは、時代の変化に合わせてどのように技術や戦略を進化させているのか。
EVは本当に普及するのか? 日産サクラの「誤算」と消費者の「不安」
日産の軽EV、サクラの販売が伸び悩んでいる。EVは充電の利便性に課題があることに加え、リセールバリューの低さが問題だ。ならばPHEVだ、という傾向もあるが、PHEVにも将来的に懸念される弱点がある。EVやPHEVを快適に使うためのシステム整備が求められる。
自動運転は「レベル2」で十分である理由 完全自動運転も“完璧”ではない
中国メーカーの高性能EVで自動運転システムによる死亡事故が発生するなど、高度なシステムでも故障や事故は起こり得る。乗用車であればレベル2の運転支援システムで十分便利だ。ドライバーが運転を管理する方が、安全で確実なシステムになるだろう。
