「国産VS.アジアン」選ぶ理由が変わった タイヤ市場の二極化とメーカーの打ち手:高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)
クルマを支えているタイヤ。実績のある国産タイヤメーカーのほか、近年はアジアンタイヤも広まっている。安さと安心でユーザーの選択は二極化している。ブリヂストンやダンロップなどは、時代の変化に合わせてどのように技術や戦略を進化させているのか。
高根英幸 「クルマのミライ」:
自動車業界は電動化やカーボンニュートラル、新技術の進化、消費者ニーズの変化など、さまざまな課題に直面している。変化が激しい環境の中で、求められる戦略は何か。未来を切り開くには、どうすればいいのか。本連載では、自動車業界の未来を多角的に分析・解説していく。
近年、クルマのパワーユニットは多様化し、ガソリン車やディーゼル車、ハイブリッド車に加えて、プラグインハイブリッド車やバッテリーEVも市民権を得ている。ボディの形状も、SUVやスーパーハイトワゴンなど、従来はなかったバリエーションが登場している。
それらのクルマに共通するのは、路面と接しているのはタイヤだけという事実だ。
そしてタイヤの銘柄も実にたくさんの種類がある。タイヤメーカー→ブランド→シリーズという順に細分化されている。一つのメーカー内にも複数のブランドがあり、さらにそれぞれに複数の銘柄を用意している。
例えばブリヂストンでは、高級車向けのコンフォートタイヤとしてREGNO(レグノ)、スポーツラジアルのPOTENZA(ポテンザ)、ウエット性能を強化したPlayz(プレイズ)、エコタイヤのECOPIA(エコピア)、オンロードSUV用のALENZA(アレンザ)、オフロード志向のSUVタイヤのDUELER(デューラー)、スタンダードタイヤのNEWNO(ニューノ)と、夏タイヤだけで7種類のブランドを擁している。
ダンロップも同様にVEURO(ビューロ)、SPORT MAXX(スポーツマックス)、DIREZZA(ディレッツァ)、ENASAVE(エナセーブ)、GRANDTREK(グラントレック)と5種類のブランドを展開している。
ほとんどのタイヤメーカーが目的別にブランドを分類しているが、横浜ゴムはやや異質な傾向を見せている。
横浜ゴムでは、スポーツラジアルのADVAN(アドバン)が圧倒的な支持を集めている。そのため、以前はコンフォート&エコのDNAやライトスポーツのAPEXなどのブランドが展開されていたが、ADVANを同社のメインブランドとして集約する動きを見せている。
ADVAN以外では、エコタイヤのBluEarth(ブルーアース)やSUVオフロード系のGEOLANDAR(ジオランダー)というブランドがあるシンプルな構成だ。これはユーザーにとって分かりやすく、横浜ゴムらしさを訴求できるブランディング戦略といえそうだ。
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