連載
自動運転は「レベル2」で十分である理由 完全自動運転も“完璧”ではない:高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)
中国メーカーの高性能EVで自動運転システムによる死亡事故が発生するなど、高度なシステムでも故障や事故は起こり得る。乗用車であればレベル2の運転支援システムで十分便利だ。ドライバーが運転を管理する方が、安全で確実なシステムになるだろう。
高根英幸 「クルマのミライ」:
自動車業界は電動化やカーボンニュートラル、新技術の進化、消費者ニーズの変化など、さまざまな課題に直面している。変化が激しい環境の中で、求められる戦略は何か。未来を切り開くには、どうすればいいのか。本連載では、自動車業界の未来を多角的に分析・解説していく。
悲惨な交通事故が起こるたびに「早く完全自動運転が普及すれば……」という意見が、ニュース記事のコメント欄に散見される。確かに運転ミスによる交通事故は、自動運転の普及で防げるケースが増えるだろう。
だが、人間だからミスをする、機械なら正確だ、と考えるのは果たして正しいのだろうか。
今年に入って、自動運転車による悲惨な交通事故が報じられた。中国の家電メーカーXiaomi(シャオミ)が販売した高性能EVが、自動運転レベル3での走行中に障害物を検知し、それを回避するどころかドライバーに運転の主権を移譲したのだ。
Xiaomiの高性能EV、SU7。モーター出力やバッテリー容量によってグレードが異なり、高性能モデルの危険性はこれまでも報道されてきた(写真:Tada Images - stock.adobe.com)
衝突までわずか2秒前の状態でシステムが運転を放り出した結果、ドライバーは何もできずに衝突してしまった。乗員は女子大生3人だったと言われているが、残念なことに若い命が3人も犠牲になったのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
EVは本当に普及するのか? 日産サクラの「誤算」と消費者の「不安」
日産の軽EV、サクラの販売が伸び悩んでいる。EVは充電の利便性に課題があることに加え、リセールバリューの低さが問題だ。ならばPHEVだ、という傾向もあるが、PHEVにも将来的に懸念される弱点がある。EVやPHEVを快適に使うためのシステム整備が求められる。
便利すぎるクルマは魅力か、それとも退屈か? ソニー・ホンダ「AFEELA 1」が問いかける“クルマの価値”
ソニー・ホンダモビリティの新型「AFEELA 1」が注目されているが、機能やサービスは魅力的なものになるだろうか。運転の簡略化やクルマのソフトウェア化が加速する中で、クルマというモビリティだからこそ実現できる体験を提供していくべきだ。
ETC障害で大渋滞、それでも「通行料は払って」 高速道路会社の“謎理論”
4月、ETCのシステム障害で94万人のドライバーが足止めされる大渋滞が発生。高速道路行政はさまざまな部分で時代に合っておらず、今回の件も、NEXCO中日本が高速料金の後払いを求めているのは不適切。もっと企業イメージを高められるやり方もあったのではないか。
迷走するトランプ関税 自動車業界で得をするのは誰なのか
米トランプ政権の関税政策が世界を振り回している。自動車業界への影響も大きいが、日本メーカーは過去の貿易摩擦問題によって、すでに海外における現地生産が進んでいる状況だ。目まぐるしく方針が変わる関税政策に対して、どのように交渉していくのか。
なぜ「ジムニーノマド」の注文が止まらないのか 変わりゆくクルマ選びの基準
スズキが発表した「ジムニーノマド」に注文が殺到し、受注を停止する事態になった。SUV人気に加えて、実用性と新しい刺激の両方を得られる期待感が高いようだ。今後のクルマ選びに対しては、充実した機能や性能をいかに分かりやすく伝えるかが重要になる。