ETC障害で大渋滞、それでも「通行料は払って」 高速道路会社の“謎理論”:高根英幸 「クルマのミライ」(1/4 ページ)
4月、ETCのシステム障害で94万人のドライバーが足止めされる大渋滞が発生。高速道路行政はさまざまな部分で時代に合っておらず、今回の件も、NEXCO中日本が高速料金の後払いを求めているのは不適切。もっと企業イメージを高められるやり方もあったのではないか。
高根英幸 「クルマのミライ」:
自動車業界は電動化やカーボンニュートラル、新技術の進化、消費者ニーズの変化など、さまざまな課題に直面している。変化が激しい環境の中で、求められる戦略は何か。未来を切り開くには、どうすればいいのか。本連載では、自動車業界の未来を多角的に分析・解説していく。
4月6日、NEXCO中日本管内の高速道路料金所でETCのシステム障害が起こり、94万人のドライバーが足止めを食らう大渋滞が発生した。まったく車列が動かない状態が続いたことで、ドライバーや乗員は空腹や喉の渇き、トイレに行けない不便さ、疲労の蓄積、足止めによる損失など、さまざまな被害を受けた。
事の始まりはETCのシステム障害(しかも原因は深夜割引の改悪のためだとか)ではあるが、考えてみれば今の高速道路行政のゆがみが、さまざまな面で浮き彫りになっている。
今年のゴールデンウイークはいわゆる“飛び石連休”だが、企業によっては11連休にしているところも珍しくない。この間、たくさんの人の移動が予想される。さまざまな観光名所を誇る地域では、インバウンドだけでなく、国内旅行を楽しむ日本人も多いだろう。
高速道路各社は、利用者を増やそうとさまざまなドライブプランを提案している。例えば、サービスエリアやパーキングエリアで利用できる買い物券付きのドライブプランや、観光施設や宿泊施設の利用クーポン付きのドライブプラン、特定エリアの高速道路が乗り放題となる周遊プランなどを展開している。
だが、休日に高速道路を利用してもらうためにドライブプランを提案しながら、大型連休や3連休は休日割引を適用外とするような方策を採っているのは、いささか矛盾しているとも思えるのだ。
帰省の時期や大型連休に長い渋滞の発生を抑えよう、という意図は理解できる。だが高速道路とは、そもそも時間と燃料を節約するための移動手段であるはず。利用者を抑制するために値上げするのは、ある程度は効果があるだろうが、高速道路の割引が利かないからといって帰省や行楽を諦めるドライバーがどれほどいるだろうか。
そう思ってしまうくらい、高速道路各社の提案や施策は稚拙だと感じてしまう。やはり、道路公団時代の“親方日の丸”的な体質が今もなお残っているのでは、と思わされるのだ。
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