ブラックカードより上、「Infinite」 三井住友カード、最上位ランク導入の狙い(4/5 ページ)
三井住友カードが2025年秋に導入する「Visa Infinite」は、Visa最上位ランク。高い決済手数料率により高還元と特典を実現し、新富裕層を狙う。その戦略は?
より多くの手数料を受け取れるInfinite
次に「クレジットカード会社の収益構造」について説明しよう。
まずカード発行会社の収益モデルは大きく3つに分かれる。1つはリボ払いなどの金利収入、2つ目は年会費による会費収入、そして3つ目が決済手数料と呼ばれる店舗からの収益だ。
Infiniteがプラチナと根本的に異なるのは、サービス基準の高さだけではない。重要なのは、カード会社の手数料収入の仕組みである。カードのランクによって、カード会社の間の経済条件も変化する。上位ランクのカードになるほど、カード会社が受け取る手数料の割合が増加する仕組みとなっており、この構造がユーザーへの高いポイント還元を可能にしているのだ。
この手数料は「IRF(インターチェンジ・リインバースメント・フィー)」と呼ばれ、加盟店がカード会社に支払う決済手数料の一部だ。クレジットカードのビジネスモデルの根幹を成す。
具体的な仕組みはこうだ。消費者がクレジットカードで決済すると、加盟店は決済金額の一定割合を手数料として加盟店管理会社(アクワイアラー)に支払う。そしてアクワイアラーは、その手数料の中から国際ブランドへのネットワークフィーや、カード発行会社(イシュアー)へIRFを支払う仕組みだ。
Visaが公開しているIRF表を見ると、具体的な数字が分かる。例えばエンターテインメント分野ではクラシックカードのIRFが0.9%なのに対し、Infiniteの場合1.5%に上昇する。
仮の数字で例を挙げると、コンビニで1000円をカード決済した時、コンビニは決済手数料として約30円をカード会社側に支払う。ここから、クラシックカードなら9円を、Infiniteなら15円をカード会社がIRFとして受け取れるわけだ。これが、Infiniteのほうがポイント還元の原資が増える理由だ。
IRFはアクワイアラーを介してイシュアに支払われるものだが、実はVisaなどの国際ブランドがその料率を慎重に調整している。IRFが高すぎれば加盟店の負担が重くなりカード決済を敬遠される恐れがあり、安すぎればカード会社の収益が減ってサービス提供が困難になるため、絶妙なバランスが求められるからだ。
ただ国際ブランド自体は、アクワイアラー、イシュアー双方から一定率を徴収するだけで、上位カード、下位カードによる収益性の変化はない。一方で、このIRFがカードランクによって異なることで、ランクビジネスが成り立つ。ランクが上位になるほどIRFは高く設定され、カード会社にとってはより多くの収益を確保でき、そこから多く還元できる構造となっている。
Infiniteカードがプラチナプリファードを上回る還元を可能にする秘密は、ここにもあった。付帯サービスなどを強化し、上位ランクのカードを出せば、年会費を高く設定できるだけでなく、IRFの高さによって決済時の手数料収入も多くなる。これがクレジットカードのランクのからくりだ。
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