「うちの会社は大丈夫」では危ない 急増するコンプラ違反倒産をどう回避する?(1/4 ページ)
コンプライアンス違反がきっかけとなる倒産が増えています。コンプライアンス違反による倒産を回避するには、さまざまな法令リスクを把握することが重要です。今回は社会保険労務士である筆者が、助成金・補助金申請と障害者雇用代行業者を利用する際のリスクと留意点を解説します。
コンプライアンス違反がきっかけとなる倒産が増えています。帝国データバンクの調査によると、2024年のコンプライアンス違反による倒産は388件に達し、倒産全体の約4%を占めました。3年連続で前年を上回り、2023年から続けて300件を超えています。
コンプライアンス違反による倒産を回避するには、さまざまな法令リスクを把握することが重要です。今回は社会保険労務士である筆者が、助成金・補助金申請と障害者雇用代行業者を利用する際のリスクと留意点を解説します。
「うちの会社は大丈夫」では危ない
企業はどんなコンプライアンス違反によって、倒産に追い込まれたのでしょうか? 前述の調査によると、違反類型別の内訳のトップは「粉飾決算」(95件、構成比24.5%)です。次いで、労働安全衛生法違反や指定取消などの「業法違反」が(72件、同18.6%)、資金流出や横領といった「資金使途不正」が(70件、同18.0%)と続いています。
「粉飾決済を行ったり、代表が逮捕されたりするのは特殊な事例。うちの会社は真面目に納税を行っているので大丈夫だろう」と考えている人も多いと思われます。しかし安心するのは早計です。
東京商工リサーチの調査によると、全国の労働局が2025年4月30日までに公表した雇用調整助成金の不正受給件数は、2020年4月からの累計が1699件に達しました。雇用調整金の不正受給とは、従業員を働かせているのにもかかわらず、休業しているように見せかけ助成金を申請して受け取ったものの、その後の調査によって不正が発覚したという状況です。
公表された1699件のうち、倒産した会社は100社で、これは東京商工リサーチが2025年2月に発表した2024年の倒産発生率0.19%の31倍です。不正受給の発覚に伴い、助成金の返還だけでなく、取引先や金融機関の信用を喪失したため、事業の継続が困難になり、倒産するケースが多いからです。
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