「うちの会社は大丈夫」では危ない 急増するコンプラ違反倒産をどう回避する?(2/4 ページ)
コンプライアンス違反がきっかけとなる倒産が増えています。コンプライアンス違反による倒産を回避するには、さまざまな法令リスクを把握することが重要です。今回は社会保険労務士である筆者が、助成金・補助金申請と障害者雇用代行業者を利用する際のリスクと留意点を解説します。
助成金・補助金申請代行業者からの勧誘には要注意
明確な統計こそありませんが、助成金や補助金などの不正受給は事業主の意志によるものだけとは限りません。助成金・補助金の申請を代行する業者の「同業他社も同じことをしていますし、ばれるリスクは低いです」といった甘い言葉に惑わされ、脱法行為に手を染めてしまった企業もあるかと思われます。
もちろん法律にのっとった提案をしている業者が大半ですが、一部、助成金や補助金を得るため、不正行為を黙認する業者もいるのは事実です。厚生労働省が管轄する雇用関係の助成金の申請代行は、社会保険労務士だけに認められている業務ですが、毎年、何人かの社会保険労務士が不正な申請に関わったとして業務停止などの懲戒処分を受けています。
コロナの収束により、雇用調整助成金の需要は縮小していますが、最低賃金の引き上げや社会保険加入者の増加に対する企業の負担が重くなっている状況から、今後は業務改善助成金のような賃上げなどで利用できる助成金の勧誘が活発になっていくと予想されます。前述したように不正行為に加担するのは一部の業者ではあるものの、注意が必要です。
怪しい業者を見分ける目安として、社会保険労務士や行政書士、中小診断士などの資格を前面に出すのではなく、コンサルタントや〇〇協会など公的な機関を連想させるような名称になっているのは慎重に対応したほうがよいです。
また、企業がもらえる金額は強調しますが、助成金や補助金をもらうための要件や社内体制の整備について、十分な説明をしないケースもあります。実際の申請実務は、外部の士業に丸投げすることが多く、士業として独立した直後などの事情から不安を感じつつも目先の売り上げを優先してしまい、つい仕事を引き受けてしまう人もいます。
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