「定時以降は空調が停止」──酷暑の今、熱中症対策がデスクワークでも重要なワケ:労働市場の今とミライ(2/3 ページ)
年々増え続けている、仕事中の熱中症による死傷災害。熱中症といえば、屋外で働く建設業や警備業などがイメージされるが、デスクワークなども無関係ではない。
義務化された熱中症対策は大きく2つ
もし社員が熱中症で倒れたら、事業者は責任を問われかねない。事業者が義務の内容を怠ると「6月以下の拘禁または50万円以下の罰金」が科されることになる。
改正労働安全衛生規則とは、事業者に「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」を義務付けるものだ。対象となるのは「WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施が見込まれる作業」である。
WBGTは気温だけではなく、湿度や日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境といった要因を組み合わせた指標だ。暑いと汗をかくが、汗が蒸発するときに皮膚から奪う熱(気化熱)により、深部体温を下げる。湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、深部体温が下がらないために熱中症リスクも高くなる。
今回義務化された対策は、大きく以下の2つだ。
(1)「熱中症の自覚症状がある作業者」や「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」が、その旨を報告するための体制整備および関係作業者へ周知する。
(2)熱中症のおそれがある労働者を把握した場合に迅速かつ的確な判断が可能となるよう、
(2-1)事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先および所在地など、
(2-2)作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送など熱中症による重篤化を防止するために必要な措置の実施手順の作成および関係者への周知
ポイントは(2-2)の措置である。厚労省が示している熱中症のおそれのある者に対する措置の例では、熱中症のおそれのある者を発見したら、作業離脱、身体冷却を行い、医療機関に搬送――という流れだ。熱中症が疑われる症状例として、ふらつき、生あくび、失神、大量の発汗、けいれん(他覚症状)、めまい、筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)、頭痛、不快感、吐き気、倦怠感、高体温などを挙げている。
また、疑いがある者を発見し、作業離脱・身体冷却後も、「返事がおかしい」「ぼーっとしている」などの意識の異常、あるいはふだんと様子が違う場合も、意識の異常ありとして取り扱い、救急隊を要請することを求めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
“燃え尽きる”日本の管理職 「これ以上頑張れない」をどう減らすのか
意欲的に仕事に取り組んでいた人が、突然意欲を失い心身の疲労を感じる、燃え尽き症候群という状態。メンタルヘルス不調の一種である燃え尽き症候群の経験者が、世界中で増加している。
退職代行は「若者の甘え」──安易に切り捨てる企業が「非効率」に陥るワケ
本人に代わり、勤務先に退職の意向を伝える「退職代行サービス」を使って退職する人が増えている。今後、退職代行の利用が増え続けることは企業社会にどのような影響を及ぼすのか。労働者と企業、双方に与えるメリットとデメリットを検証したい。
「34年ぶり」の大幅賃上げが、ゆくゆくは中小企業を苦しめるカラクリ
2025年の賃上げの最終結果が出た。1991年の5.66%以来、34年ぶりの賃上げ率となる一方で、注目すべきは、日本の労働者の7割が働く中小企業の結果だ。
カスハラ加害者=消費者という思い込み 企業が従業員を守るために再確認すべきこと
悪質なクレームなど、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止を事業主に義務付ける法案が国会に提出されている。5月16日に衆議院を通過し、今国会で成立の見込みだ。罰則はないものの、すでに東京都では「カスハラ防止条例」が4月1日から施行され、多くの企業でカスハラ対策が進みつつある。
