「管理職になりたくない」若手・中堅が続出するワケ 7年目で起きる「成長の空白期間」が組織を蝕む(2/2 ページ)
若手・中堅社員の65%が「管理職になりたくない」と回答。入社3年目と7年目前後に離職意向が高まり、転職や「静かな退職」が進む。企業にはキャリアの空白を埋める仕組み作りが急務だ。
「コスパが悪い」は単なる不満ではない
転職まで至らなくても、組織へのモチベーションが低下する「静かな退職」も広がっている。同調査では、若手・中堅社員の約75%が「生活やプライベートの充実を第一に考えたい」と回答しており、仕事重視の約3倍に上る。
サービス統括部の小松苑子主任研究員は次のように指摘する。
「特に『生活重視』かつ『目標志向的ではない』層は、離職意向が高く、ワークエンゲージメントも低い傾向が見られます。彼らは『費用対効果』を重視し、管理職業務の『責任の重さ』や『プライベートとの両立』を懸念しています」
こうした社員は仕事の範囲を広げず、停滞した状態に陥りやすい。その姿を見た周囲の社員が「管理職は大変そうだ」と感じ、さらに管理職志向が低下するという負の連鎖が生じている。
組織を救う「成長経験デザイン」と「前適応」
こうした状況を打開するため、同社は2つの予防策を提案している。
1つ目は「成長経験デザイン」だ。小松氏は「個人のやる気に任せるのではなく、組織がバックキャスティング思考(将来から逆算する思考)で、次の役割に必要な経験を前倒しで与える仕組みを作ることが重要だ」と語る。若手・中堅社員が1年目から段階的に成長できる経験を体系化し、上司の支援を組み込むことが求められる。
2つ目は「管理職への“前適応”」である。昇進前に管理職業務の一部を経験させ、役割を具体的にイメージできるようにする手法だ。過去の調査では、昇進前に「管理職になりたくない」と思っていた人の半数以上が、昇進後に気持ちをポジティブに変化させていた。
小松氏はまた、管理職業務を切り出して中堅社員に任せる重要性を説く。
「これにより管理職の業務負荷を軽減しつつ、中堅社員はマネジメントのプレ経験を積むことができ、一石二鳥の効果が期待できます」(小松氏)
若手・中堅社員のキャリア観が多様化する現在、企業は単に育成の空白を埋めるだけでなく、個人の志向に即した成長機会を提供し「個と組織を生かす」新たな道筋を描くことが急務となっている。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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