2015年7月27日以前の記事
検索
インタビュー

AOKIHD副社長に聞く「チェーンビジネスの要点」 地域に最適化した「カセット型DX」とは?(1/3 ページ)

AOKIホールディングスはファッション、エンターテインメント、ブライダルと3業種にわたるチェーンビジネスを続ける中、いかにして多業種多店舗経営と標準化を実現しているのか。照井則男副社長に聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

 AOKIホールディングス(横浜市)は、スーツの「AOKI」を柱とするファッション企業として著名だ。だが、実はその事業領域は多岐にわたる。ブライダルの「アニヴェルセル」、カラオケの「コート・ダジュール」、フィットネスジムの「FiT24」、そして複合カフェ「快活CLUB」など、幅広く展開している。


AOKI 兵庫夙川総本店(以下、副社長以外の写真はAOKIホールディングス提供)

 特に快活CLUBは複合カフェ市場において業界最大級の店舗数を誇り、深夜の休憩やテレワークの場として、売上高を伸ばし続けている。運営会社の快活フロンティアの売上高は、約584億円(2020年3月)から約725億円(2025年3月)まで増加した。

 ファッション、エンターテインメント、ブライダルと3業種にわたるチェーンビジネスとして多角化経営を続ける中、同社はいかにして多業種多店舗経営と標準化を実現しているのか。AOKIホールディングスの照井則男副社長に聞いた。


照井則男 1996年に日本マクドナルド株式会社入社。2003年にスターバックスジャパン株式会社入社。2008年4月にVice Presidentに就任し、本国と連携をとりながらシステムデザインから設計までの刷新に取り組む。2015年に株式会社AOKIホールディングスに執行役員 情報システム副本部長として入社。2018年に常務取締役 情報システム本部長、2019年6月グループ情報システム担当を経て2023年6月に取締役副社長執行役員に就任。ほか株式会社ランシステム取締役、 株式会社快活フロンティア取締役執行役員を現任している。68歳。東京都出身(撮影:河嶌太郎)

鍵付き個室が示した新需要 チェーンビジネスの要点とは?

――AOKIホールディングスが快活CLUBなどを多店舗展開していく中で、直面している課題を教えてください。特にデジタル化やセルフシステム導入の関係で考えていることはありますか。

 複合カフェという業態の観点からすると、利用者のニーズはどんどん多様化しています。そのときに、われわれが提供できる「コンテンツ」とは一体何なのか。これを一歩先んじて考えることが、一番難しいと感じています。

 例えば首都圏の店舗では、鍵付き完全個室に対するニーズが非常に高い状況にあります。そこで漫画を読むわけではなく、むしろ「休息を取りたい」、この時期だと「涼を取りたい」といった需要も多い。そうなると、滞在すること自体がひとつのコンテンツになっているわけです。

 従来の発想では、インターネットカフェはコミックやソフトドリンク、あるいはネット動画がコンテンツだと考えていましたが、今では休息やプライベートな環境そのものがコンテンツといえます。そうした発想の転換によって、新しいタイプの店舗づくりを進めています。そしてもう一つ、できるだけスムーズにブースや個室に入りたい、さらには接客なしで利用したいといったニーズも確実に存在します。そうした地域では、セルフ型サービスが一つの解決策になると考えています。


快活CLUBのセルフフロント

――一方で、接客を求める根強い声も残っているということでしょうか。

 そうですね。特に地方の店舗に目を向けると、むしろ店員とのコミュニケーションを楽しむ利用者も少なくありません。「どう使えばよいですか」と機器の使い方を尋ねられて店員が答えることで、利用者が背中を押してもらえる場面もあります。

 私たちはファッション、エンターテインメント、ブライダルという3事業を展開しており、そこで培ったのがやはり“接客の力”です。だからこそ「全てがセルフでよい」とは思っていません。顧客が迷っているとき、高いレベルのコミュニケーションで支援する環境を提供することは、今後もわれわれの事業において重要だと考えています。

3事業で磨いた「接客力」という資産

――接客が必要な場面も含めて、セルフ化と両立させる必要があるわけですね。照井副社長は「人がやるべきこと」と「自動化で効率化すべきこと」の線引きをどう考えているのでしょうか。

 私自身これまで、日本マクドナルド、スターバックスジャパンと、チェーンストアでずっと働いてきました。こうしたチェーンビジネスにおいて、IT利用の基本的な考え方は「利用者の目に触れないところでのIT活用」でした。裏側のオペレーションをデジタル化することで利便性を高め、結果的に利用者が快適に体験でき、同時に従業員の生産性も高められる。そういう形が理想だと考えていました。

 したがって、利用者との接点部分は大切にする、そこでの人の力を重視することが望ましいと考えていました。バックヤードではITがしっかり支え、従業員は利用者にしっかり向き合う構図こそが理想だと思っていました。

 しかし、今は状況が大きく進化しています。利用者自身が従業員とのコミュニケーションよりもスピード感を重視し、自分自身でさっと行動を完結できることを求める場面も増えています。そうしたニーズがある店舗では、セルフ化した方が当然に利便性は高まります。

 ただし、それが全ての店舗に当てはまるわけではありません。セルフと接客、それぞれのバランスを店舗や地域ごとにどう最適化するか。そこに現在、最も注力しているところです。

――人による接客は、AOKIグループにとってどういう強みがあるとお考えですか。

 接客に関しては、われわれが自信を持って打ち出せる部分だと思っています。例えば、当社はファッション、エンターテインメント、ブライダルという、3つの異なる業種を展開しています。その中で培われた接客の考え方が、強みだと考えています。

 これはホテルのコンシェルジュサービスを思い浮かべると分かりやすいかもしれません。「今日はどこで食事をするべきか」「観光に行くならどこが良いか」といった内容は、インターネットで調べれば確かに得られます。しかし、コンシェルジュとの会話を通じて提案を受けたり、一人一人の状況に合わせて肌感覚で判断してもらえたりする価値は、ネットでは決して手に入りません。だからこそ、コンシェルジュは存在しているし、その価値が認められている。私はそこに接客の本質があると思っています。

 そうした観点から考えると、AOKIのファッション事業における接客のアプローチと、複合カフェ事業における接客の在り方は、当然異なるはずです。さらに言えば、フィットネス事業の場合、基本的には利用者が自主的にトレーニングをします。しかし、スタッフが「今日は調子どうですか」と一言声をかけるだけで、モチベーションが大きく変わることもあります。

 そう考えると、顧客との接点は、単に自動化・非接触化を進めればよい、という単純な話ではありません。状況や事業特性に応じて、人だからこそできる付加価値を提供することが重要だと考えています。


ブライダルの「アニヴェルセル」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る