ポイント経済圏の知られざる主戦場 データは小売業の未来をどう変えるのか?:「ポイント経済圏」定点観測(7/7 ページ)
楽天、Vポイント、Ponta、dポイントの4大勢力が展開するポイントビジネス。その本質は、単なる顧客の囲い込みではなく、別の意図があった……。
データ活用型ビジネスの進化と展望
楽天ペイメントの営業組織は350〜400人体制で5000社以上を支援しており、最大の課題は人材育成だ。「データを分析するだけではなく、解釈をして、マーケティングに生かしていく提案をするところまでがセットだと思っている」(林氏)。ただ、データサイエンティストとコンサルタント、両方のスキルを持つ人材の育成には時間がかかる。
2014年の参入から10年。共通ポイント市場は新たな競争フェーズに突入した。ファミリーマートのように複数の共通ポイントを導入する企業もあれば、独自ポイントとの併用を選ぶ企業もある。ただ、「なるべく楽天ポイント1本でやっていただけた方が、提供できる価値は大きい」(林氏)
プライバシーへの配慮も欠かせない。欧州のGDPR(一般データ保護規則)のような厳格な規制はないが、日本でも個人情報保護への意識は高まっている。企業は透明性を保ちながら、消費者の理解を得る努力が必要だ。
便利さと引き換えに提供している個人データ。その活用が、より良い買い物体験と効率的な小売業の運営につながるなら、それは社会全体にとって有益だ。
重要なのは、企業と消費者の間に信頼関係を築き、双方が納得できる形でデータ活用を進めること。共通ポイントの未来は、この信頼関係の上に成り立っている。
筆者プロフィール:斎藤健二
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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