「マツダのCX-5」ディーゼルはなぜ姿を消したのか 次世代エンジンと燃料の行方:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
マツダCX-5の新型では、ディーゼルエンジンがラインアップから外れるという。その理由とは何か。ディーゼルエンジンには強みもあり、廃油を利用したバイオ燃料の開発も進んでいる。低炭素社会を目指す技術開発にはさまざまな可能性がありそうだ。
廃食油から生まれるバイオディーゼル燃料
そうはいっても、既存のディーゼルエンジンでそのまま使える燃料でなければ、ユーザーは混乱するし、コスト面でのメリットも薄くなる。そのためCNF(カーボンニュートラル燃料)として利用できるのはドロップイン(燃料タンクに給油してそのまま使える)の燃料だけだ。
そこで現在、廃食油をベースにしたバイオディーゼル燃料の実用化が進められている。廃食油から作り出されるバイオディーゼル燃料には大きく分けて2種類ある。
1つは廃食油にメタノールを混ぜ、反応によってできたグリセリンを取り除いたFAME(脂肪酸メチルエステル)だ。これは分子構造に酸素を抱えるため、酸化しやすいという特性を持つ。さらに燃料系にも悪影響を及ぼす可能性があるだけに、限定的に利用したい燃料だ。
したがって、現在は従来の化石燃料とブレンドして利用されるケースがほとんど。作りたてなら100%FAMEでもディーゼルエンジンに使えるが、国内では軽油に約5%混合して利用されるケースが一般的だ。
先日マツダが開催したディーゼル燃料の勉強会で、このFAMEのサンプルに触れさせてもらった。すでにサンプルとして長い間利用されているであろうその液体は、無色透明ではなくお茶のように黄色く変色し、古い油の臭い(旧車の車内でもたまに臭う)がした。
バイオディーゼル燃料の違い。廃食油を原料にしている点はFAMEもHVOも同じだが、精製の処理方法が異なるため、特性が異なる。FAMEは成分に酸素を持つため酸化しやすく、燃料系統にも悪影響を与える可能性がある(写真:平野石油)
FAME100%でもディーゼル燃料として利用できるらしいが、その場合はやはり鮮度が問題となりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
クルマのヘッドライトは明るいほどいいのか 「まぶしさ」を解消する最新技術
クルマのヘッドライトは急速に進化してきた。明るさとデザイン性を高めてきた一方で、周囲のドライバーが「まぶしい」と感じてしまう問題も発生。それを解決する新しい技術も開発されている。今後も、より安全で広い視界を確保できるライトが出てきそうだ。
BYDの軽EVは日本で売れるのか 苦戦が予想される“これだけの理由”
中国のBYDが日本で軽自動車のEVを投入すると話題になっている。しかし、日本で売れるのかは微妙だ。その背景には、モノづくりに対する根本的な考え方の違いがある。品質に対する姿勢が従来と変わらないなら、日本ではあまり受け入れられないだろう。
「マツダCX-60」はスタートラインに立てたのか “フルボッコ”試乗会からの逆転劇
乗り心地に難があったマツダCX-60は、マイナーチェンジによってどう変わったのか。快適性が高まり、生まれ変わったと思えるほどの変化を感じた。エンジンの進化も続いており、今後もクルマとしての魅力を高める取り組みに期待できそうだ。
EVは本当に普及するのか? 日産サクラの「誤算」と消費者の「不安」
日産の軽EV、サクラの販売が伸び悩んでいる。EVは充電の利便性に課題があることに加え、リセールバリューの低さが問題だ。ならばPHEVだ、という傾向もあるが、PHEVにも将来的に懸念される弱点がある。EVやPHEVを快適に使うためのシステム整備が求められる。
スポーツカーはいつまで作り続けられるのか マツダ・ロードスターに見る作り手の矜持
スポーツカーが生き残るのが難しい時代になった。クルマの楽しみ方の多様化や、規制の厳格化が背景にある。一方、マツダ・ロードスターの大幅改良では、規制対応だけでなく、ファンを納得させる改善を実施。多様化が進む中でビジネスもますます複雑になるだろう。