「マツダCX-60」はスタートラインに立てたのか “フルボッコ”試乗会からの逆転劇:高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)
乗り心地に難があったマツダCX-60は、マイナーチェンジによってどう変わったのか。快適性が高まり、生まれ変わったと思えるほどの変化を感じた。エンジンの進化も続いており、今後もクルマとしての魅力を高める取り組みに期待できそうだ。
高根英幸 「クルマのミライ」:
自動車業界は電動化やカーボンニュートラル、新技術の進化、消費者ニーズの変化など、さまざまな課題に直面している。変化が激しい環境の中で、求められる戦略は何か。未来を切り開くには、どうすればいいのか。本連載では、自動車業界の未来を多角的に分析・解説していく。
マツダがミニバンを廃止してからずいぶんたつ。MPVもビアンテも、マツダらしいユニークさを備えたミニバンであったが、ラインアップから外れた。
「Be a driver.」や「人馬一体」など、運転の楽しさや操縦する喜びを提供するというテーマを掲げている以上、人や荷物を運ぶことを優先するミニバンで同社の思想に沿ったクルマを作り上げることは難しい、という判断は潔いほどで、理解できる。
そこで5人乗り以上のドライバーズカーをSUVに絞り、FRプラットフォーム(これをSUVだけに使うのはもったいないと思うのは筆者だけではないだろうが、諸事情を考えると納得できる)を開発。CX-60を2022年に作り上げた。
しかし欲張り過ぎ、盛り込み過ぎ、頑張り過ぎの感は否めず、熟成不足で荒削りな感触が伝わってしまったのだろう。当時、試乗会でマツダの広報と開発エンジニアはフルボッコ状態であったと聞く。これもマツダに対する期待の表れであったのだろうが、想定外の事態に社内は戸惑ったのではないだろうか。
登場した頃のCX-60は、とにかくシャープなハンドリング性能が際立ち、車重やボディサイズを感じさせない軽快感があった。だが、前席に座っていても後席の乗り心地の悪さが想像できるほど突き上げ感が強く、リアサスペンションが十分に機能していないクルマであった。
おそらく開発過程では、さまざまな路面や道路環境で走行試験を繰り返したと思うが、これまでにないSUVを生み出そうという熱意によって、乗り心地への感覚が鈍っていった可能性もある。
しばらくは、ネットでの評判や乗り心地改善の対策など、さまざまな情報が飛び交っていた。マツダも、走り込むことでサスペンションがなじんで乗り心地が改善した試乗車を用意するなど、ネガティブなイメージの払拭に熱心な姿勢だった。
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