なぜマツダは「売らない拠点」を作ったのか? その先にある“マツダらしさ”とは:高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)
マツダが開設した「MAZDA TRANS AOYAMA」は、ブランドの世界観を周知するための施設だ。自動車メーカーがクルマを販売しない拠点を設ける試みは以前からあり、商品やブランド価値の発信に一役買っている。今後もブランド力の強化と発信が重要になりそうだ。
高根英幸 「クルマのミライ」:
自動車業界は電動化やカーボンニュートラル、新技術の進化、消費者ニーズの変化など、さまざまな課題に直面している。変化が激しい環境の中で、求められる戦略は何か。未来を切り開くには、どうすればいいのか。本連載では、自動車業界の未来を多角的に分析・解説していく。
2025年2月6日、マツダが東京・青山に新しい施設をオープンさせた。「MAZDA TRANS AOYAMA(マツダ トランス アオヤマ)」は、クルマを展示するが直接の販売は行わず、マツダのデザイン観、世界観を周知するための施設だ。
クルマ関連の展示物があるほか、カフェを併設してゆっくりと過ごせる空間を用意している。また、今後さまざまな催しもここで開催する予定だ。マツダによれば、同社に接する全ての人に「いきいきする体験」を届けることを目的にしているらしい。
マツダ車に乗っていない人にも“マツダのある生活”を想像してもらえるよう、ロードスターの試乗体験なども用意している。この施設によってユーザーに新たな体験をもたらすことを目指しているという。
マツダが青山にオープンしたMAZDA TRANS AOYAMA。クルマを展示するが販売は行わず、展示物や空間でマツダの世界観を伝える。また、さまざまなイベントを通じて新たな体験を提供する計画だ(画像提供:マツダ)
なぜ、こうした“クルマを売らない”ショールームを作るのか。それは、ユーザーは購入意欲がない状態で販売ディーラーを気軽に訪れるのは難しいからだ。
週末には来場者プレゼントなどを用意したり、平日にもレディースデーやオイル交換キャンペーンなどの特典を告知したりしてまでディーラーが集客するのは、それだけ購入候補者を呼び込みたいからだ。ディーラーにとっては見込み客をいかに確保するかが、安定して収益を上げ続けるための方策である。
スズキのジムニーノマドやホンダのシビック・タイプRのように、受注を停止するほどの人気車種であれば、放っておいても注文が入るが、そんなクルマばかりではない。トヨタの3代目プリウスのように幅広い客層から注文が殺到したようなクルマは、この先なかなか現れないだろう。
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