「マツダのCX-5」ディーゼルはなぜ姿を消したのか 次世代エンジンと燃料の行方:高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)
マツダCX-5の新型では、ディーゼルエンジンがラインアップから外れるという。その理由とは何か。ディーゼルエンジンには強みもあり、廃油を利用したバイオ燃料の開発も進んでいる。低炭素社会を目指す技術開発にはさまざまな可能性がありそうだ。
低炭素社会を目指す技術開発の未来とは
広義にはマツダ独自のSPCCI(火花点火制御圧縮着火=プラグ着火の圧力を圧縮着火に利用する燃焼方法)のスカイアクティブXも含まれる、HCCI(予混合圧縮着火=ガソリンエンジンで圧縮着火により希薄燃焼を実現する)は、夢のエンジンといわれている。ディーゼルとガソリンのいいとこ取りのようなエンジンだが、ディーゼルエンジンのように燃焼室にある空気を断熱材や熱の吸収によって膨張させることはできない。
ガソリンエンジンの伸びやかな加速フィールは、スポーツドライビングを楽しむドライバーにとっては非常に魅力的な要素だが、エンジンでの走りを楽しむという環境を維持していくことを考えると、スポーティーなディーゼルエンジン車の設定もアリではないか、と思う。
かつてアクセラスポーツに設定されていた2.2リットルディーゼルエンジン搭載グレードのXDは、あふれんばかりの大トルクで豪快な加速をみせるディーゼルホットハッチだった。今でも根強い人気を誇っている。スーパー耐久選手権に参戦して開発が進められているMAZDA3は、まさにその発展版ともいうべき仕様だ。
マツダは、MAZDA3のスカイアクティブD2.2を搭載したマシンを製作し、2022年からスーパー耐久選手権に参戦している。変速機や足回りを改善し、強く速いマシンへと鍛え上げてきた。その成果は市販車にも生かされている(写真:meiju0919)
ガソリンや軽油の使用量を抑えても、石油製品は連産品であり、他の石油製品を得るために燃料も作られ続けるから、化石燃料も使い続けなければならない。だがプラスチックや化学繊維の原料を植物由来にして、あらゆるところで雑草のように繁殖力のある原料植物を植えれば、緑化による気温上昇の抑制効果も見込めるから一石二鳥という発想もできるのだ。
そんな絵空事のように思えることも、地道な技術開発を続けることで実現へと近付いていく。
日本がカーボンニュートラルを達成しても、地球の平均気温上昇を0.04度しか抑えられないという試算もある。中国やインド、米国など、日本以外のCO2排出が多い国の協力なしでは気候変動を抑制することはできないからだ。
それでも気候変動を抑えようという取り組み自体が素晴らしい。そこで培った技術やアイデアが別の分野でも生かされるし、気候変動の真犯人が判明すれば、それに向かって解決策を生み出す原動力につながっていくはずだ。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。
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