「どっちの石が好き?」――3カ月で累計450万再生、謎コンテンツに潜む偏愛:シリーズ「編集部の偏愛」(2/2 ページ)
ただ石を選ぶだけの動画「激突!石バトル!」が、3カ月で450万再生を突破した。無意味さが逆に熱狂を生み、SNS時代の拡散力と結びついて急成長している。その背景には“推し文化”と新たなビジネスの可能性が潜んでいる、かもしれない。
専門家の分析
こうした「石バトル」の人気の理由について、エンタメ産業に詳しい野村総合研究所の滑健作氏に見解を聞いた。滑氏は「二択構造のシンプルさがSNS時代の拡散性と非常に相性が良い」と分析する。
特別な知識がなくても短時間で参加できるうえ、「投票やコメントがクリエイティビティ発揮のきっかけになる」と語る。さらに重要なのはテーマ設定だという。「本件は単なる石について“どちらが好きか”を問うだけなので、深刻な対立構造は生まれにくい。政治や社会問題を題材にすれば争いが激化するが、石であれば平和で遊び心あるやりとりが続く」。
滑氏はまた、「無意味だからこそ面白い」という価値観そのものに注目する。旧2ちゃんねる時代から存在した「何もないものに無理やり価値を見いだす」文化は、SNSに受け継がれてきたという。
「誰かが題材を投げ込むと大喜利のように盛り上がりが継続する現象は昔からありました。石バトルも同じ文脈にあり、“ノリで楽しむ”空気感を自然に生み出しています」と指摘する。視聴者が能動的に石を推す遊び方を楽しんでいる点も、継続的な盛り上がりを支えている。
考えてみれば、企業もこの仕組みを活用している。明治の「たけのこの里」VS.「きのこの山」をめぐる“国民的論争”はその代表例だ。あえて対立軸を作り、「一家言ある」ユーザーを自然と巻き込むことで、話題性を増幅させていく。
石バトルも同様に二択構造を生かしてはいるが、題材はより無意味に思える。だからこそ商業性を感じさせず、遊び心を持った参加者が寄り集まっていく。無駄の中にこそ新たな価値が宿る――その象徴的な事例として、ネット発の新しいエンタメの形を提示している……のかもしれない。
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