周回遅れのMUFG、「金利ある世界」に攻勢 20年ぶり新店舗でリテール強化(3/4 ページ)
リテール戦略で「周回遅れどころか2周3周遅れ」と指摘される三菱UFJ銀行。約20年ぶりとなる新店舗「エムットスクエア高輪」で反転攻勢へ。マイナス金利解除で90兆円超の預金が「足かせ」から「武器」に転換した。
巻き返しの具体策
エムットスクエア高輪は、従来の三菱UFJ銀行の店舗とは大きく異なる設計になっている。山本常務は4つの特徴を挙げた。「第1に、個人のお客さま専用店舗。あえて対象を個人に特化することで、暮らしや将来にまつわるお金のちょっとした困りごとを気軽に相談できる場を目指した」
法人顧客を扱わないことで、個人客の待ち時間短縮と相談時間の確保を狙う。向井理人リテール・デジタル部門副部門長は「窓口の混雑が緩和され、ゆっくりと相談いただける時間や場所を確保できる」と説明する。
第2の特徴は営業時間の大幅拡大だ。「平日11時から20時、土日祝日も営業する」。「現役世代の方は9時から15時の平日には来店が難しい。そういった新しいお客さまがどれだけお越しいただけるか、どんな相談をいただけるかが一つのメルクマール(指標)」と山本常務は期待を込める。
第3が、店舗デザインの刷新だ。「銀行らしい堅苦しさを取り払い、ふらっと立ち寄れる空間にした」。カウンター中心の従来型から、ロビー空間を広げ、タブレットでの取引を中心とする。「従業員の服装や香りでも新しさを表現している」という細部へのこだわりも見せる。
そして第4に、金融以外のイベント開催だ。「お子さま向けの金融教育やビジネスパーソン向けの朝活セミナーなど、地域の皆さまの暮らし全体を豊かにする拠点にしたい」
この新店舗は単発の実験ではない。向井氏は「既存店舗の3分の1から4分の1をエムットスクエアに切り替えていく」と明かす。「来月には大阪の箕面萱野に第2号店を出店する。似たコンセプトで展開し、この2つがパイロット店舗となる」
出遅れを認識しているからこそ、展開スピードにもこだわる。だが、正直なところ、これらの施策も他行が既に実施しているものに近い。では、後発のMUFGは何を武器に、先行する競合に追い付き、追い越そうとしているのか。
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