なぜ新入社員の6割が「年功序列を支持」するのか “古い働き方”が生み出す価値とは?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)
日本の20歳の好奇心は、スウェーデンの65歳とほぼ同じ──。今から10年以上前に、こんな衝撃的な事実が話題になりました。そして今回、再び驚きの結果が、産業能率大学総合研究所の調査で明らかになりました。
「長い目で見る」ことの大切さ
そもそも「年功序列」や「終身雇用」のマイナス面ばかりが強調されてきましたが、見方を変えれば、これらは現代の日本社会に適した経営方針といえます。長期的な雇用と収入が保証されることで、将来への不安が和らぎ、従業員の会社への帰属意識も高まります。その結果、企業は腰を据えて人材を育成できるようになります。
人間の能力には、短期的に開花するものと、長い時間をかけて開花するものがあり、成果主義は前者の能力を評価する制度です。一方、年功序列は、起動するまでに長い時間を要する後者の能力を取りこぼさない制度です。
2000年代に入り、グローバル化が本格化し、競争が激しくなったことで、日本は「世界に負けられない!」とばかりに、短期間で回収できる成果ばかりを追い求めてきました。働く人たちも短い時間で、できるだけ多くの効果が上がるスキル習得に群がりました。
しかし、イノベーションにはスケールの大きな創造力が不可欠です。そのためには、試行錯誤を繰り返し、長い時間をかけて経験と知識を蓄積しなければなりません。そうして培われた土台の上に、それを実現する技術が加わったときに、イノベーションは初めて花開くのです。
実際、企業の利益の伸び率は、数年単位の中期よりも10年以上の長期目線で経営に取り組む企業の方が大きくなることが確認されています。(『潤う企業 10年先に照準』 日経電子版 2025年7月6日)
いずれにせよ、少子高齢化で労働力が減少する一方で、40歳以上が8割を占める「超中年社会」に日本は突入しているのですから、 企業側は年功序列を否定するだけではなく、その「安定性」と成果主義の「競争力」を融合させた「ハイブリッド制度」に舵を切る時代に突入したと考えた方がいいと思います。
すでに取り組んでいる企業もあります。以前、取材した企業では、月給は年功序列型で、ボーナスは成果主義を採用していました。また、個人の成果ではなくチームの成果として、チームに対しインセンティブを加える賃金体系にした企業もありました。
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