なぜ新入社員の6割が「年功序列を支持」するのか “古い働き方”が生み出す価値とは?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/3 ページ)
日本の20歳の好奇心は、スウェーデンの65歳とほぼ同じ──。今から10年以上前に、こんな衝撃的な事実が話題になりました。そして今回、再び驚きの結果が、産業能率大学総合研究所の調査で明らかになりました。
「新しい価値」を生むため、企業が取り組むべきこと
私は常々、長期雇用(終身雇用)の重要性を指摘してきました。これは制度ではなく、経営者の経営哲学だ、と。その根底にあるのは「人の可能性を信じる力」です。そして、それを実現する手法の一つがリスキリングです。
日本では「リスキリング(Reskilling)=学び直し」と捉え、社員の自主性に任せる傾向があります。しかし、本来のリスキリングは単なる学習の手段でなく、経営者の長期的な「経営戦略」があって初めて意味を持つ教育です。
リスキリングは「新しい価値」を生むための、企業全体の取り組みです。一部の社員ではなく、新入社員から経営サイドまでの全てのメンバーが、企業が掲げた長期戦略に向けて、それぞれの立場で求められる技能、コミュニケーション能力、さまざまな企業や人たちと協働する能力などの強化を目的に行うのです。
それは同時に、非正規VS.正規、若者VS.ベテラン、デジタル世代VS.アナログ世代といった、社内に存在する“壁”をなくし、「一緒に成長しよう!」という会社から社員へのメッセージです。
従業員は使い捨てのリソースではなく、企業価値を高める重要な資産と考えれば、社員教育やリスキリングへの投資は必然ですし、ビジネス環境が激しく変化する状況下では、今いる社員の能力を最大限に引き出し、新しい価値を生み出す方がコストもかかりません。世界の企業がリスキリングに注目しているのも、まさにこの文脈です。
また、最近の若手社員は会社に「自分を成長させてくれる」ことを期待する傾向がありますので、本当のリスキリングを行えば、社員の会社へのコミットメントも高まるでしょう。そして、彼らの成長欲を持続させるために、数値目標を達成したかというような定量的な結果だけでなく、その過程での貢献や協調性といった定性的な成長を評価するマネジメントを実現してください。
とにもかくにも、働く人たちは「単なる労働力」として消費されることにうんざりしているので、「人」としての成長に関わってくれる企業を「いい企業」と評価します。よって「私」に投資してくれる企業に、ますますいい人材が集まる好循環も期待できることでしょう。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) など。
新刊『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)発売中。
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