コラム
ファミマが“衣料品専門店”を初出店 コンビニの他業種進出で小売はどう変わる?(2/5 ページ)
ファミマが東京・浜松町に誕生したブルーフロント芝浦に、衣料品専門店をオープンした。なぜ衣料品に力を入れるのか。そこにはコンビニ業界が抱えるある課題があった。
ファミマの衣料品専門店の背景にある、コンビニ市場の課題
ファミマはなぜ、衣料品分野に注力するのだろうか。
この背景には、「コンビニ市場の飽和」があると、筆者は考えている。全国のコンビニ店舗数は、2010年代後半にピークを迎えて以降、ほぼ横ばいだ。出店拡大で成長してきたコンビニ業界にとっては、成長にブレーキがかかった時期といえる。
流通アナリストの中井彰人氏によると、このような飽和市場において、コンビニが次に狙うべきニーズは2つある(参照リンク)。1つは商圏を細分化し、出店余地を生み出すこと。もう1つは新たな需要を取り込むことだ。
「商圏を細分化し、出店余地を生み出すこと」の例としては、これまで流通の問題から出店が難しかった過疎地域や農村部などにも進出することが挙げられる。また、オフィスビル内に小型店舗を設けるといった形も考えられる。
「新たな需要を取り込むこと」とは、これまでコンビニをあまり利用してこなかった層にも利用してもらうことだ。中井氏によれば、これまでの市場拡大は出店数の増加に依存してきた。しかし、出店余地が少なくなった現在は、新たな利用者を取り込むことで1店舗当たりの売り上げを伸ばす戦略が必要となる。
ファミマの衣料品販売拡大は、この新たな需要取り込みの典型例といえるだろう。大手アパレルなどで衣料品を買っていた人々に対して、コンビニでもデザイン性や機能性に優れた衣料品が買えることを示し、アパレル市場でシェアを獲得しようとしているのである。
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