「スキル」だけでは見抜けない、“デキるPM”をどう選ぶか 企業が実践すべき5つの評価手法(1/3 ページ)
年々深刻化するIT人材不足ですが、近年はAIの台頭やDX需要の高まりにより、上流工程で意思決定を担える人材の不足が一層顕著になってきました。なかでも特に深刻なのが、プロジェクトマネジャーやプロダクトマネジャーといった中間マネジメント層です。
著者:芦野成則
レバテック株式会社 リクルーティングアドバイザー
一橋大学を卒業後、官公庁に5年半勤務し、2019年にレバレジーズに中途入社。企業の採用支援を行うリクルーティングアドバイザーとして、多角的な視点から採用支援を実施
プロジェクトマネジャー(PM)不足は、もはや業界を超えて共通認識となり、開発現場の大きな課題となっています。
年々深刻化するIT人材不足ですが、近年はAIの台頭やDX需要の高まりにより、上流工程で意思決定を担える人材の不足が一層顕著になってきました。なかでも特に深刻なのが、PMやプロダクトマネジャー(PdM)といった中間マネジメント層です。厚生労働省が発表した「労働経済の分析 令和6年版」によると、情報通信業の75%、非情報通信業の57%がPM不足を深刻視していることが明らかになっています。
実際の開発現場でも、「エンジニアはそろっているのにプロジェクトが進まない」「要件が固まらず炎上する」といった声が相次ぎ、企業のDX推進の停滞要因としてPM不足が影響しているケースも少なくありません。
なぜ今、「PM不足」が叫ばれているのか
現在、多くの企業でPMやPdMの募集が見られますが、求人票を比較するとその定義は企業ごとに異なります。組織の規模やフェーズによって役割の幅も異なり、スタートアップや小規模組織では一人が企画から進行管理まで担う一方、大手や大規模開発組織では「PM=進行管理」「PdM=企画責任」と明確に切り分けるケースもあります。
こうした定義の曖昧(あいまい)さは、採用現場で求職者の期待と実際の業務内容のズレを生む要因となっています。例えば「技術職出身のPMとして採用されたが戦略策定まで任された」「PdMとして入社したのに進捗管理ばかり担当している」といった事例はめずらしくありません。
情報処理推進機構(IPA)が発表した「DX動向2025」によれば、DX推進に必要なスキルを把握できている日本企業はわずか14.9%にとどまり、米国やドイツの約50%と比べて大きな差があります。加えて75.7%の企業が評価基準を持っておらず、「どんな人材をPMと定義するか」が曖昧なまま採用が進んでいる実態が浮き彫りになっています。
この状況を放置すれば、採用のミスマッチはさらに拡大し、せっかく採用した人材であっても力を発揮できずに早期離職やモチベーション低下につながりかねません。こうしたリスクを回避するためにも、企業は「自社にとって必要とされるPM像や役割を明確に定義すること」が不可欠です。
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