メンタル不調で休職 「社会保険料支払いは?」「同じ職場に戻れなければ退職は合法?」【社労士が解説】(2/3 ページ)
近年、メンタル不調による休職者が増加しています。身体的な問題と異なり、メンタルの問題は第三者から判別しにくいため対応に悩む企業も多いでしょう。メンタル不調の申し出があった際の留意点について、社会保険労務士が解説します。
休職の申し出があったとき、どう対応する?
では「メンタル不調で休職したい」という申し出があった際、会社側がすべきことは何でしょうか? それは医師の診断書を提出してもらうことです。
「体調が悪いため働けないのに診断書を提出する必要がある?」という不満を述べる従業員もいるかもしれません。しかし休職は無給であるとはいえ、有給休暇と異なり、明確な理由が必要である旨を伝えましょう。就業規則に診断書提出の義務を記載していれば、そのことも説明してください。
体調が回復して復職する場合も、「診断書に記載された症状が解消したか」という主治医の見解を提出してもらうケースが多いため、復職できるかの判断基準を設けるためにも診断書は重要な要素となります。なお就業規則に診断書提出の記載がなくても、提出を求めて問題ありません。
企業が休職制度を設けるメリットと注意点
ちなみに休職制度は労働基準法で定められていないため、制度自体を設けていなくても違法ではありません。ですが、大半の会社では休職制度を設けています。
会社側の視点からでも、休職制度は設けた方がよいでしょう。求人難により、昨今では採用にかかるコストは高くなる傾向があります。病気やけがによって就業不能になってしまった場合、休職制度がないとせっかく費用をかけて採用した社員に退職してもらわなければならないからです。
また、体調不良の社員を解雇する際、もめる恐れがあります。しかし休職制度に「期間を過ぎて体調が回復しない場合は自然退職する」という条文があれば、退職理由で従業員ともめる可能性は少なくなります。従って就業規則に以下のような条文があるか確認してみましょう。
休職を命じられた者が休職期間満了時に復職できないときは、休職期間の満了をもって退職とする。
休職期間中は無給として退職金の在籍期間から除外する企業が大半ですが、労働基準法上での定めはありませんので会社が自由に決められます。なお給与は発生しなくても、会社負担分と従業員負担分の社会保険料は発生します。給与の支払いがない場合は、給与からの天引きができないため、従業員負担分の保険料を本人に請求する必要があります。
会社側が立て替えてもいいですが、休職者が回復せず退職してしまうと社会保険の立替分を払えない恐れがあります。毎月請求した方が、従業員にとっても払いやすいでしょう。従業員が休職に入る前に社会保険料は支払わなければならないことを説明しておきましょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
【法改正】10月から「育児・介護休業法」が変わる 企業がすべき対策は? 社労士が解説
育児・介護休業法の改正により、10月1日から企業には「子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置」の実施が義務付けられます。法改正の背景やどんな準備を進めればよいか、社会保険労務士が解説します。
リファラル採用で紹介者に「報酬100万円」はアリ? 法律違反を避けるための要点
中途採用の方法として、リファラル採用を導入する企業が増えています。そこで今回は、リファラル採用のメリットと導入する上での留意点を社労士が解説します。
「1on1をすれば大丈夫」は間違い 若手の心理的安全性を高める“3つの説明”
新入社員や中途採用社員の定着率を高めるためには、心理的安全性を高めることが重要だといわれています。企業は心理的安全性を高めるため、苦心しているように見受けられますが、見落とされがちなことについて社会保険労務士の立場から解説します。
「公益通報」と「ハラスメント」、企業は相談窓口を分けるべき 線引きの理由を解説
兵庫県やフジテレビなどの問題を通じて、注目が集まる公益通報者保護制度。3月4日には、公益通報者保護法の一部を改正する法案が閣議決定され、1年半以内に施行されることになりました。法改正の概要やハラスメント対策との違いについて解説します。
