メンタル不調で休職 「社会保険料支払いは?」「同じ職場に戻れなければ退職は合法?」【社労士が解説】(3/3 ページ)
近年、メンタル不調による休職者が増加しています。身体的な問題と異なり、メンタルの問題は第三者から判別しにくいため対応に悩む企業も多いでしょう。メンタル不調の申し出があった際の留意点について、社会保険労務士が解説します。
復職に必要な準備や考え方
メンタル不調による休職は、身体的なけがや病気と比べて、もとの状態に回復したかどうかの判断がつきにくいです。一般的には本人との面談や医師による診断書を基に、復職できるかを決めていきます。
この際に留意しなければならないのは、労働者の健康情報などを保護することです。労働者の状況について問い合わせがあっても、社外社内問わず、最低限の回答にとどめるようにましましょう。
本人や主治医が復職して問題ないと主張しても2〜3カ月程度は、復職前の勤務体制に戻すのではなく、短時間や週に3〜4日のお試し勤務に就かせた方がいいです。復職の手順や留意点については、厚生労働省と労働者健康安全機構が作成した「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が参考になります。
復職時にありがちなトラブル
復職の際に問題となるのが、休職前の職場に戻るのを要件とするかです。「営業のようにノルマがある職種は無理だが、総務のように営業的ノルマがない内勤の部署であれば復帰できる」というケースもあるからです。
新入社員のように総合職として入社した場合は、復職前と異なる職場に配属となるケースもありますが、中途採用社員のように職種を限定して入社した場合は、休職前の前の職場に戻れなければ退職としている企業もあります。
また大企業と異なり、中小零細企業では、他に配置する部署がないという状況も考えられます。ただし片山組事件判決(※)のように、休職前の職場以外の配置を認めなかった企業を違法と判断した例もありますので慎重に検討したほうがよいでしょう。
(※)最高裁第一小法廷平成10年4月9日判決(労判736号15頁)
2024年4月1日以降、労働条件通知書には入社直後の業務のほかに、変更の範囲を明記しなければならなくなりました。業務の内容が変わる可能性があるとしているのに、現職以外に復帰を認めないとすると矛盾が生じます。休職については、自由に設定できる反面、会社の特性や労働条件通知書(雇用契約書)の整合性なども考慮する必要があります。
著者プロフィール
佐藤敦規(さとう あつのり)
社会保険労務士。中央大学文学部卒。50歳目前で社会保険労務士試験に挑戦し合格。三井住友海上あいおい生命保険を経て、現在では社会保険労務士として活動。法人企業の助成金の申請代行や賃金制度の作成に携わっている。 社会保険労務士としての活動以外にも、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「プレジデント」などの週刊誌やウェブメディアの記事を執筆。 著書に、『45歳以上の「普通のサラリーマン」が何が起きても70歳まで稼ぎ続けられる方法』(日本能率協会マネジメントセンター)、『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』(以上、クロスメディア・パブリッシング)などがある。
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