新人「議事録はAIにやらせました」何がダメなのか? 効率化の思わぬ落とし穴:「キレイごとナシ」のマネジメント論(5/5 ページ)
新人がAIを駆使すれば効率化できる――はずだった。ところが現実は顧客の信頼を失う危険すらある。便利なはずのAIが、なぜ組織のリスクに転じてしまうのか。
上司が果たすべき役割とは
ただ、新入社員に問題があるわけではない。指導者が気を付けなければならないことだ。
AIは「超優秀な新入社員」とよく言われる。だから、知識も経験も足りない新入社員が、”超優秀な新入社員”に何らかの指示を出したとしても、うまくいくはずがない。このことを上司は理解しよう。
そのうえで、これまで通り、基礎教育の徹底をすべきだ。上司が単純な作業をAIに任せればうまくいくだろうが、それをし続けると新入社員の仕事がなくなっていく。だからといって新入社員にAIを使わせられないのだから、大事なのは、
「AIにできることも、新入社員に任せること」
なのだ。そうしない限り、新入社員が正しく成長することはないだろう。AIには学習させても、新入社員に学習させなければ、戦力にはならないのだから。
ある製造業の事例を紹介しよう。
この会社では、新入社員研修でAIを一切使わせない。3カ月間、全て手作業で仕事を覚えさせる。議事録は手書き、資料作成も一から、メールももちろん自分で考えて書く。
非効率に見えるかもしれない。しかし3カ月後、新入社員は仕事の本質を理解しはじめた。何が重要で、何が省略可能か。これが自分で判断できるようになった。
その後、AIツールを導入すると新入社員たちは、AIを適切に活用できるようになった。どこにAIを使い、どこを人間が担当すべきか。この区別ができるのだ。
結果として、生産性は飛躍的に向上した。AIに振り回されることなく、AIを使いこなせるようになったからだろう。
AIは確かに便利だ。しかし基礎知識や基本を欠いたAI活用は、砂上の楼閣といえる。
「タイパが悪い」などと言わず、新入社員には、まず仕事の基本を身に付けてほしい。急がば回れ。基礎があってこそ、AIの真価を発揮させられるのだ。
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