桃太郎の「きび団子あげるから家来に」は通用しない 理想のリーダーはなんて言う?(3/3 ページ)
桃太郎の「きび団子あげるから家来になれ」は現代のリーダーシップとしては通用しません。では、どんな言葉が適切でしょうか?
――リーダーとしてのスキルを磨くには、何から始めれば良いでしょうか?
自分が何に情熱を感じるかを突き詰めることが必要なので、まず自分を観察することです。次に周りのメンバーを観察し、自分と同じ意見か、違うならどんな意見でどう違うのかというデータを取ると良いと思います。
「桃太郎」の話に当てはめると、まず自分がなぜ鬼退治に行きたいのかを明確にすることで、「なぜ皆に手伝ってもらいたいのか」「どうすれば参加してもらえるのか」を考えることにつながります。昔なら「きび団子を渡す」ように一律のご褒美で仲間を募りましたが、今の時代それでは誰も動きません。
1on1で「和菓子が好き」と聞き出していたら、「一緒に食べに行こう」と誘い出すことができる。そんな個別最適化された関わりが効果的です。メンバー一人一人を観察し、適切なアプローチを考えてみてください。
――部下やチームメンバーのモチベーションを高めるために、どんな工夫ができるでしょうか?
リーダーのあなたが黙ることです。沈黙に耐え相手に話させると、会話が転がり始め、新しい発見や主体的な行動が引き出されます。リーダーの発言は絶対的な正解に聞こえがちで、意図せずメンバーの発言を封じてしまうことが多いです。だからこそ、意識的に沈黙をつくることが大切です。
――理想のリーダー像は時代とともに変化していくものなのでしょうか?
10年程度の周期で変化すると考えています。私自身もかつては、威厳があって引っ張ってくれるリーダーが理想だと思っていましたが、時代とともに変化していると感じます。そして、かつての理想のリーダー像の一つであった、威厳のある存在に戻っていく可能性は限りなくゼロに近く、一方的に指示したり気合いでモチベーションを上げようとしたりするやり方はもう難しいと思います。
――最後にメッセージをお願いします。
最近ではデータからも、感情面のケアを怠るとチームが崩壊することが証明されつつあります。今は、心理的安全性やエンゲージメントといったソフトスキルが求められる時代です。まずは、自身の情熱に目を向け、チームメンバーをよく観察することから始めてください。そこから、リーダーとしてのスキルは磨かれていくはずです。
林健太郎
合同会社ナンバーツー代表。エグゼクティブ・コーチ、リーダー育成家。一般社団法人国際コーチング連盟日本支部創設者。大手企業を含む延べ25万人以上のリーダーにリーダーシップを指導。企業内の研修講師としての実績も豊富。著書に、シリーズ累計22万部超のベストセラー『否定しない習慣』『子どもを否定しない習慣』『リーダーの否定しない習慣』(以上、フォレスト出版)『チームが「まとまるリーダー」と「バラバラのリーダー」の習慣』(明日香出版社)ほか多数。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「会社の良い面」だけを伝えていないか? 採用のミスマッチ、面接の場でどう防ぐ
早期離職は日本企業における重要課題だ。採用のミスマッチを避けるためには、面接の場をうまく活用する必要がある。面接の場をどのように作り上げればいいのか?
採用面接で「うそを話しているかもしれない」と感じたら? 応募者の本質を見抜くコツ
応募者の人生を大きく変える可能性を持つ採用面接。その中で応募者が「事実とは違うこと」を話しているかもしれないと感じたら? 応募者の本音を見抜くための「採用面接の本質」について取材した。
「伝わる資料」の作り方 アイデアに詰まったときの打開策は?
1人でプレゼン資料を作成していて、アイデアに詰まった経験を持つビジネスパーソンも少なくないだろう。そんなときの打開策を紹介する。
採用面接で「同じ質問」を使いまわすのは問題なのか? 面接官が陥りやすいミス
面接官は採用面接でどのような質問をしているのか? 「同じ質問」を使いまわすことは問題なのか。面接官が陥りやすいミスを解説する。
