「セルフレジの次のDX」は? ロボ店員、アバター接客……大手コンビニ3社が進める“省人化計画”の中身:一部を無人店舗に(1/2 ページ)
コンビニエンスストア各社は、人手不足が厳しくなる中で、レジや売り場の店員を極力少なくして省人化に努めている。カギを握るセブン‐イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの取り組みを聞いた。
コンビニエンスストア各社は、人手不足が厳しくなる中で、レジや売り場の店員を極力少なくして省人化に努めている。この数年はその対策として、外国人の雇用やセルフレジの導入を進めてきた。だが、抜本的な解決には至っていないため、デジタルを活用して一部を無人店舗にする動きもみられる。
大手3社によって、日本の市場はほぼ飽和状態になっていて、店舗のスクラップアンドビルドが進む。いかにしてコストを減らしながら売り上げを伸ばし、利益を確保するかが問われている。そのコスト面で大きな比率を占めるのが、店舗スタッフの人件費だ。
最低賃金は近年、全国加重平均が時給1000円を大きく上回る水準まで上昇し、全ての都道府県で引き上げが続いている。これが人件費増の主要因となり、収益を圧迫する要因となっている状況だ。
コンビニは顧客サービスを低下させずに、人件費をいかに削減できるかがポイントとなっている。そのカギを握るセブン‐イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの取り組みを聞いた。
“三社三様”の「省人化」の中身は? セルフレジの次はこう変わる
三菱商事とKDDIによる共同経営体制(資本業務提携)のもとにあるローソンは、東京・TAKANAWA GATEWAY CITY内に、「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」を開店した。この店舗は、リアルの温かみとテックの力を融合させた未来コンビニ「Real×Tech LAWSON」の1号店だ。
店舗内のサイネージでは、演出を楽しみながら買い物ができる空間を実現させた。店内での買い物以外にも、暮らしに関わるさまざまなサービスの相談ができるリモート接客など、リアルな店舗にデジタル技術を融合。より温かみのある買い物体験の提供を目指している。
限られた人手でも、持続可能な店舗オペレーションを確立するためのテクノロジーを活用中だ。例えばロボットが品出しや店内清掃、調理などの業務を支援する。そのほか、ロボットの運用データや店舗内の防犯カメラ映像などから、AIエージェントが業務量を算出・分析して業務効率化をサポート。店舗が抱える人手不足などの課題解決に取り組む。
ローソンの佐久間大輔オープン・イノベーションセンター長は「KDDIさんとの提携は、通信技術だけでなく、幅広くDXを進める上で大いに役立っている」と話す。
広がるアバター接客
店内にはセルフレジを8台設置した。うち4台がキャッシュレス専用レジだ。残りの4台は、現金でも対応ができる。キャッシュレス専用レジの1台には3Dアバターを表示。レジ操作に関して何か問い合わせがあれば、アバターに向かって問いかけると答えてくれる。
実はお客の姿はカメラで見られており、裏側でスタッフがアバターとして問い合わせに答える仕掛けになっているという。このアバターは、酒類やタバコなど年齢確認が必要な商品を購入する際に、その確認作業を手伝ってくれるのだ。
酒とタバコは店によっては大きな売上比率を占める。そのため、無人レジで年齢をいかにして確認するかが課題となっていた。お客がアバターに問いかけるとスクリーン越しにスタッフが見ているため「極めて厳密な確認作業ができる」(佐久間オープン・イノベーションセンター長)という。セルフレジで問い合わせに答えるアバタークルーは、約80人いるそうだ。
アバターには、これまでスタッフが対応していた店内での問い合わせ応対など、業務のかなりの部分を代行できる遠隔接客機能がある。アバター接客が人手不足対策の切り札になる可能性もある。現在、ローソンでは全国の31店舗にアバターの機能を入れており、状況を見ながら拡大する方針だ。
店内調理の先駆けとなったローソンは、名物の唐揚げ作りにも、ロボットを導入した。スタッフの調理時間の削減に貢献しているという。将来的には調理の全工程を自動化するべく、現在は実験をしている段階だ。
「場所に合わせて使い分け」
佐久間オープン・イノベーションセンター長は「テクノロジーを使って人手不足を解消するところと、一方で人でなければならない部分も残っています」と話す。
「都市部でないところはお客さまとの距離感が近くなってきます。ですので接客の部分はできるだけ人が対応するようになります。逆に都市部では『レジはさっと済ませたい』という要望も強いので、場所に合わせた使い分けが必要だと考えています。全ての店舗を高輪ゲートウェイシティ店のようにしようとは思ってはいません」
今後は「人の温かみを大切にしながら、サポートできるテクノロジーは何なのか。この検証をブレずにやっていきたい」と話す。「進化するテクノロジーを取り入れながら実験をし、本当に展開できるものは何なのかを検証していきたい。その結果、役立つ技術を取り入れていきたいので、現在はあくまでスタートの段階です」
ローソンは、今後の出店戦略において、都市部と地方で役割が異なると考えている。
佐久間オープン・イノベーションセンター長によると、都心部ではコンビニが飽和状態にある一方、地方の過疎地域では、スーパーの撤退などにより「コンビニのニーズが新たに高まっている状況がある」という。ローソンはこうした店舗を「地域共生コンビニ」と位置付け、地元自治体からも相談を受けながら、地域にとって不可欠なインフラとしての役割を担い始めている。
実際、6月には山梨県の道志村に出店した事例を挙げ「これらの店舗は想定以上に高い客単価と予想を上回る売り上げを記録したことを確認しました。この成功から、過疎地域における新たな出店ニーズを確信しています」と話す。
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