「セルフレジの次のDX」は? ロボ店員、アバター接客……大手コンビニ3社が進める“省人化計画”の中身:一部を無人店舗に(2/2 ページ)
コンビニエンスストア各社は、人手不足が厳しくなる中で、レジや売り場の店員を極力少なくして省人化に努めている。カギを握るセブン‐イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの取り組みを聞いた。
ファミマは「誰でも使える」無人決済レジ
ファミリーマートは、レジに人がいない無人決済店舗を商業施設、大学、病院など約50店舗に導入している。タッグを組んだのはJR東日本グループのスタートアップ企業「TOUCH TO GO」だ。
棚に取り付けた重量センサーと、天井に備え付けた約20台のカメラにより、客が棚から商品を取り出した時点で、どの商品を選択したかが把握できる。これによりレジの前に立った時点で手に取った商品が画面に表示されるため、バーコードの読み取りが不要になるのだ。
お客は選択した商品を確認しながら無人決済のレジでカード、電子マネー、現金から選択して支払う。宅急便受付や、収納代行などのサービスは提供できないものの、ビルの中にあって、毎日決まった人が買い物にくるような立地には適している。
東京駅近くのサピアタワーに設置した無人決済店舗を見てきた。通常の店舗より小さく、品ぞろえもそれほど多くない。事前の登録も必要なく、誰でも利用できる。セルフレジが2台設置してあり、すぐ近くにJR東京駅バスターミナルがあるため、スーツケースを持った若者世代のバス利用者が弁当などの食料を買っているのが目についた。このレジはスマホを持っていなくても利用できるため、スマホの扱いが苦手な高齢者でも簡単に買い物ができるようだ。
買い物中にトラブルが起きると、レジ脇に設置したカメラを通してコールセンターにつながる。そのため、中高年もスムーズな買い物ができるという。防犯対策としては、正しく会計が終わるとゲートが開き、退店できる仕組みになっている。法人開発部 特定施設開発グループ 江川賢マネジャーは「お客さまは店内ではカメラで監視されていると感じます。そのため、ほかの店舗と比べて万引きの比率は低い」と指摘する。
多様な出店形態
レジは無人化している一方、店舗の裏にはスタッフが定期的に来て、品物が並ぶ棚を整えるといった作業をする。レジの無人化はできても、売り場に品物を並べたり、店舗内を掃除したりといった有人対応は、必要だという。今後の出店の在り方はどうか。
不特定多数の顧客が来店し、終日営業する店舗などでは引き続き有人対応が必須となる。しかし病院、大学、オフィスビル内など来店客が限定される場所では、オーナーの意向を受けて無人レジ店舗を提案するケースがあるという。特に大学や病院などでは、時間帯によって忙しさが大きく変わるため、時間帯に応じて無人と有人対応を切り替えるハイブリッド型の店舗も導入されている。
江川マネジャーは「無人決済店舗の拡大を進める方針ですが、具体的な数値目標は持っていません。その代わり、それぞれの立地条件に合わせて多様な形の店舗を出せるカードを複数持っていることが、大きな強みになっています」と強調した。
セブンはロボットを活用
セブン‐イレブン・ジャパンは9月、東京都荒川区の荒川西尾久7丁目店で、店舗業務をサポートするロボットやアバターの試験運用を開始した。ロボットやアバターの導入により店舗業務を効率化。店内で調理する「セブンカフェ ベーカリー」などカウンター商品の拡販や、接客サービスの質向上などを通じて、売上増加につなげる狙いだ。同時にこうした実験を通じて、定時業務量の3割削減を目指したいとしている。
セルフレジに隣接して置かれているアバターを活用した接客では、セルフレジ利用時のサポートや店内の防犯強化に加え、9カ国語対応の翻訳機能によってインバウンド客へ対応する。1人のオペレーターが最大3台のアバターを同時に運用できるという。
9月16日から、大阪・関西万博会場内の「セブン‐イレブン西ゲート店」で、来店客が操作する「蒸式(じょうしき)調理ロボット」を導入した。ラーメンやうどんなどの麺類の販売を始めた。同社によると、小売店舗において、客自身が操作する形式でロボットを導入するのは初めてという。
蒸式調理ロボットは、人型ロボット「Pepper」や清掃ロボット、配膳・運搬ロボットなどを手掛けるソフトバンクロボティクス(東京都港区)が開発した。高圧・高温の飽和水蒸気で専用の冷凍食品を急速に調理する仕組みだ。麺のコシやスープの香りを損なわず、専門店に近い味わいを再現できるという。
接客、調理などのサービス業務 どこまで効率化できるか
コンビニ大手をはじめ、流通の分野では人手不足解消の切り札として、デジタルテクノロジーを積極的に店内に導入し、コストの削減を狙っている。しかし、顧客の中にはデジタル決済が苦手な中高年層も含まれるため、全てのサービスを一気にデジタル化はするのは難しい。スタッフが対応するサービスも一部残しつつの、デジタル化を積極的に進める方針だ。
今後は接客、調理を含めたさまざまなサービス業務を、デジタル技術を駆使してどこまで効率化できるかが問われている。
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