なぜ人は「うまい話」に群がるのか――「みんなで大家さん」の高利回りは明らかに「持続不可能」だった(4/4 ページ)
年利6〜7%の「高利回り」と「元本割れなし」を信じた投資家たち。だが、その実態は資金の“付け替え”による延命だった。崩れた安全神話が示すのは、個人投資家の危うい「信じたい心理」だ。
金融リテラシー向上が唯一の防衛策
「元本割れなし」という宣伝文句の裏で、運営母体は常に破たんと隣り合わせの経営状態にあった。この情報は長年公開されていたにもかかわらず、多くの投資家は高利回りの魅力に目を奪われ、足元のリスクを検証することを怠ったと言わざるを得ない。
なぜ個人投資家は、これほど多くの危険信号を見逃したのか。
そこには、ゼロ金利政策の長期化による利回りへの渇望があるのではないか。物価上昇により預金や賃金の実質的な価値が目減りする中、銀行に預けても資産が増えない焦りが、高利回り商品への過度な期待を生み出し、冷静な判断力を鈍らせたと考えられる。
また本件は、2012〜13年にも同社が資産過大評価という不適切な会計処理で行政処分を受けていたという過去があった点も見逃せない。一度ならず繰り返される法令違反は、組織の体質そのものに問題があったことを示唆している。
「みんなで大家さん」の破たんは、個人投資家にとって痛烈な教訓となる。大きなリターンを「安全」に提供するようなうまい話は存在しないし、存在したとしてもWEB広告やCMで誰でも知ることができる状態で放置されることは起きない。投資にあたっては、「あなたは特別な存在である」という宣伝文句に足をすくわれないよう、常に自身の置かれた立場を再考するといった姿勢が必要なのだ。
個人の資産形成において、自らの資産を守る唯一の武器は金融リテラシーだ。投資とは、事業のリスクを理解し、その対価としてリターンを得る行為に他ならない。
「市場金利とかけ離れた高利回り」には必ず裏があると疑う健全な懐疑心こそが、第二、第三の「みんなで大家さん」から身を守る最良の防衛策となる。
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