なぜ人は「うまい話」に群がるのか――「みんなで大家さん」の高利回りは明らかに「持続不可能」だった(3/4 ページ)
年利6〜7%の「高利回り」と「元本割れなし」を信じた投資家たち。だが、その実態は資金の“付け替え”による延命だった。崩れた安全神話が示すのは、個人投資家の危うい「信じたい心理」だ。
2022年から「自転車操業」状態とHPで開示され続けていた
では、なぜ「みんなで大家さん」は過去15年間、高配当と元本割れなしを維持できたのか。その答えは、事業の収益構造ではなく、資金調達の構造にある。都市綜研インベストファンドのデューデリジェンスレポートや財務分析によれば、そのスキームは新規投資家からの資金を既存投資家への配当に充てる、いわゆる「タコ足配当」と酷似した特徴をもっていた。
営業者である都市綜研インベストファンドの財務諸表は、その脆弱性を明確に示している。
2022年3月期の決算では、手元の現預金が約45億円に対し、年間配当の予想支払額は、当時の出資金869億円に年利7%を掛けると約60億円に達すると試算され、手元資金だけでは到底配当をまかなえない状態だったのだ。
健全な不動産投資であれば、配当の原資は対象不動産から得られる「賃料収入」であるはずだ。
しかし、同社は事業から十分なキャッシュフローを生み出せていなかった。にもかかわらず高配当を継続できた唯一の方法は、新たに出資を募った別のファンドの資金を流用することであった。
この構造的欠陥は、2024年6月の行政処分によって新規の資金流入が停止したことで、即座に露呈した。
最大の資金源であった「ゲートウェイ成田」関連ファンドの問題が、無関係であるはずの鹿児島や三重のファンドを含む合計27商品にまで波及し、配当遅延が「伝染」したのだ。
これは、各ファンドの資金が分別管理されておらず、単一の巨大な資金プールで「ドンブリ勘定」されていたことの動かぬ証拠となった。
財務健全性の目安とされる自己資本比率は、一般的に30%以上を安定企業の基準とし、50%以上で優良企業とされる中、同社はわずか7.9%だった。これは会社の資産のほとんどが投資家からの預かり金や出資金、つまり「負債」で構成されていることを意味し、極めて脆弱な財務基盤であった。
個人投資家が専門的な財務分析を行うことは困難かもしれない。しかし、同社は2022年から構造的に持続不可能であることが予見できる財務指標を開示し続けており、少しでも注意を払って開示資料を読み込めば、異常性に気づけるレベルの明らかな危険信号が点灯していたのである。
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