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「厳罰化でミス防止」は失敗の始まり 組織がエラーを防ぐためにできる、唯一のこと河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)

マネジメントの本質を“現場の目”で見つめ直した学者、ヘンリー・ミンツバーグ。 ミンツバーグの主張の一つである「エラーは罰すべきものではなく、学びの源である」を基に、長浜市の事務ミス厳罰化について考えてみましょう。

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著者:河合薫

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。


 ドラッカーは「経営の神様」として知られていますが、マネジメントの本質を“現場の目”で見つめ直した学者がいます。ヘンリー・ミンツバーグです。 ミンツバーグの主張の一つが、「エラーは罰すべきものではなく、学びの源である」という考え方です。

 彼は「組織は人間的なシステムであり、管理ではなく理解が重要だ」と説きました。過剰に現場を管理するマネジメント手法を否定し、信頼の文化がない組織は形式だけのルールで自滅すると警鐘を鳴らしたのです。

 そんなミンツバーグの思想をふと思い出したのが、「市役所職員の事務ミスを厳罰化へ」という見出しで、京都新聞がWebで報じた滋賀県長浜市のニュースでした。

組織が「ミス防止のため」にできる、唯一のこと

 職員が事務上のミスをした場合、内容によっては戒告などの懲戒処分を行うと長浜市長が明らかにしたとか。懲戒処分とは驚きですが、SNSでは「厳罰化すべき!」との声がある一方で、むしろ「逆効果になる!」と市長の判断を批判する声が目立ちました。

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提供:ゲッティイメージズ

 「厳罰化」の発端は、6月24日に行われた長浜市議会にさかのぼります。事務ミスが多発していることに対し、「市政に対する信頼を損なうもので、極めて遺憾。市長が先頭に立って信頼回復へ格段の努力すべき」と、適正な事務執行を市に求める決議を市議会は全会一致で可決。算定ミスで2つの交付金が減り市財源から持ち出しが発生したり、ふるさと納税ワンストップ特例の漏れで税控除がされなかったり、さらには、特別児童扶養手当の支給遅れや、住宅新築の補助金で対象外の人に交付が決定されるなど、耳を疑うようなケアレスミスばかりが続いたそうです。

 これらの指摘を受け、市が発生原因を調べたところ「組織意識・連携不足、組織で業務を行う意識の欠落、管理・責任感不足などが確認された」と、市長が9月の定例月議会で説明。 そこで再発防止策として市長が提案したのが、「罰則の見直し」です。

 これまでは罰則のなかった「単純な過失による事務ミス」に対し、過失の程度によっては「時代に即した適正な処分を行うことで、市政への信頼回復に全力を尽くす」と発言。これを受けての報道でした。

  一方で、ではどうやって「単純ミス」を見つけるのか? という点が気になるわけですが、市長提案説明資料には「事務の進捗状況管理の強化」と記されています。つまり、ミンツバーグが否定し続けた、管理の強化を徹底するとしたのです。

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