ニデック「特別注意銘柄」の烙印 上場廃止もちらつく中、市場が見据える“再生の条件”(2/4 ページ)
不正会計で「特別注意銘柄」となったニデックに、なぜ投資家は再び買いを入れたのか。暴落からの反発劇の裏には、創業者・永守重信氏の強烈なリーダーシップが生んだ「属人経営」という宿痾がある。市場が賭けるのは、“呪縛”を断ち切り真の組織力を獲得できるかどうかだ。
「事件」でも買いか? 市場が下す評価の分離
相場の格言に「事故は買い、事件は売り」というものがある。
不正会計や法令違反といった「事件」は、企業の組織風土という根幹の問題であり、「売り」が定石とされてきた。
しかし、この古い格言は、現代の市場において必ずしも定石とはいえなくなってきている。
例えば、2011年に発覚したオリンパスの粉飾決算事件だ。過去の巨額損失を隠蔽(いんぺい)するための長年にわたる組織的な粉飾は、日本企業のガバナンス不全を象徴する大事件だった。発覚後、株価は80%以上暴落し、上場廃止の瀬戸際に立たされた。
だが、同社は経営陣を刷新し、ソニーからの資本注入を受け入れ、強みである医療(内視鏡)事業への集中という事業再生を断行した。市場がこの「膿を出し切る」姿勢と、中核事業の圧倒的な競争力を再評価すると、株価は数年かけて事件前の水準を遥かに超え、不正発覚時の10倍近くまで株価は上昇した。
フジ・メディア・ホールディングス(HD)のケースも記憶に新しい。2025年1月、タレントの中居正広氏の引退にまつわる同社の不祥事が伝わると株価が一時急落した。しかし、市場の関心は同社のPBR(株価純資産倍率)が0.4倍台という極端な割安状態で放置されていた点に集中した。
これは、同社が保有する豊富な不動産や有価証券といった資産価値が、本業の放送事業の停滞懸念から株価に全く反映されていないことを示していた。この状況に対し、アクティビスト(物言う株主)が経営改善や株主還元を要求。さらに、割安さの是正期待から買いが集まる展開となった。不祥事発覚がきっかけで、同社の株価は2倍になったのだ。
これらの事例が示すのは、もはや市場は「事件」の重大性だけを見ているわけではないということだ。起きた問題の是正可能性と、事業の中核的価値の毀損度合いを、ある種冷徹にてんびんにかけるような価値観へ変化しているというわけだ。
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