「とりあえず出社」だけを押し付けていないか? “出社回帰”成功企業が実践する3つの共通点(1/3 ページ)
かつてリモートワークを推進していた企業の多くが、次々と「原則出社」へと舵を切り始めています。出社回帰は単なる働き方の見直しにとどまらず、経営戦略の転換や事業の変化、組織の再編など、企業全体に影響を及ぼします。レバテックの最新調査データをもとに、「なぜ今、出社回帰が起きているのか」「企業はこの変化とどう向き合うべきか」を読み解きます。
著者:芦野成則
レバテック株式会社 リクルーティングアドバイザー
一橋大学を卒業後、官公庁に5年半勤務し、2019年にレバレジーズに中途入社。企業の採用支援を行うリクルーティングアドバイザーとして、多角的な視点から採用支援を実施
2020年以降、急速に浸透し、新たな働き方の一つとして定着したリモートワーク。しかし今、その潮流には変化の兆しが見え始めています。かつてリモートワークを推進していた企業の多くが、次々と「原則出社」へと舵を切り始めているのです。
実際に、レバテックのデータでも「原則出社」の求人は、2023年6月からわずか2年で約3.4倍に増加した一方で、「フルリモート」の求人は、ピーク時である2023年6月から29.5ポイント減少。出社回帰の動きが強まっていることが見て取れます。
出社回帰は単なる働き方の見直しにとどまらず、経営戦略の転換や事業の変化、組織の再編など、企業全体に影響を及ぼします。本記事では、レバテックの最新調査データをもとに、「なぜ今、出社回帰が起きているのか」「企業はこの変化とどう向き合うべきか」を読み解きます。
企業が「出社回帰」を成功させるには?
レバテックが実施した調査によると、 ITエンジニアの約4人に1人が「出社頻度が増えた」と回答しました。特に大手企業の方針転換を契機に、出社回帰の動きは業界全体に広がりつつあります。なぜ今、「出社回帰」が起きているのでしょうか。理由は2つです。
1つ目が、コミュニケーションと育成の課題です。企業が出社を求める主な理由として最も多かったのは「コミュニケーションの希薄化」(46.6%)、次いで「新人教育の難しさ」(34.2%)、「生産性の低下」(32.1%)でした。 いずれも、組織運営上の正当な懸念といえるでしょう。
2つ目が、組織運営や人材配置の最適化といった戦略的な意図です。例えば、全社的に出社を義務化しつつも、職種や成果に応じて柔軟な勤務形態を認める企業も存在します。これは、組織の統制を保ちつつ、現場のパフォーマンスやスキルを踏まえて最適な人材配置を行う動きと捉えることができます。
さらに、こうした動きの背景には、市場や技術の変化も影響しています。近年は生成AIの導入による業務効率化を見据え、自社に必要な人材像を見直す企業が増えている他、あえて「人にしかできない仕事」を対面で行う企業意識も高まっています。
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