「とりあえず出社」だけを押し付けていないか? “出社回帰”成功企業が実践する3つの共通点(2/3 ページ)
かつてリモートワークを推進していた企業の多くが、次々と「原則出社」へと舵を切り始めています。出社回帰は単なる働き方の見直しにとどまらず、経営戦略の転換や事業の変化、組織の再編など、企業全体に影響を及ぼします。レバテックの最新調査データをもとに、「なぜ今、出社回帰が起きているのか」「企業はこの変化とどう向き合うべきか」を読み解きます。
出社回帰が企業にもたらすリスク
出社回帰の動きが進む中、企業にとって最大のリスクの一つが優秀なエンジニアの流出です。
レバテックの調査によると、勤務先が出社回帰に転じた場合、約4割のエンジニアが「転職を検討する」と回答し、30代ではその割合が半数を超える結果となりました。リモート前提で生活やキャリアを構築してきたエンジニアにとって、突然の方針転換は心理的・実務的な負担が大きく、柔軟な環境を求めて市場に流出するリスクが高まります。
出社を強制することで、生産性やエンゲージメントの低下も生じます。企業は「生産性低下」を理由に出社を促す一方で、調査によるとエンジニアの約4割が「リモートでも生産性は変わらない」と回答し、過半数は「むしろ生産性が向上した」と答えています。こうした企業と社員の認識ギャップを無視して出社を強制すると、社員が必要最低限の業務しか行わない、いわゆる「静かな退職」(Quiet Quitting)を招きかねません。
リモートワークは、育児・介護・地方在住などの制約を抱える人材の活躍の機会を広げ、企業のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進を後押ししてきた側面もあります。安易な出社回帰はこうした人材の就業機会を奪い、組織の多様性と持続的成長を損なうリスクもはらんでいます。働き方の選択は、もはや一部の人材のための配慮ではなく、多様な価値観とスキルを取り込むための経営戦略の一部として再定義すべき局面にあるといえるでしょう。
出社回帰による、組織文化の再構築
某大手IT企業では週1日出社や週2日以上の出社を推奨、外資大手では週5日体制に戻す企業も。一見すると「逆戻り」のように見えますが、背景にはコミュニケーションの質向上や組織文化の再構築という企業側の意図があります。
フルリモートでは部署を越えた交流が減り、新しい関係や偶発的な学びが生まれにくくなります。実際、現場からは次のような声も聞かれます。
「Slackでは必要最低限のやり取りしかしなくなった」
「新人が誰に質問していいか分からず孤立している」
「雑談や壁打ちの中から生まれていたアイデアが減った」
このように、人と人の摩擦が減ることで組織の温度が下がり、創造性やスピードが鈍る現象が各所で見られます。企業が出社を求めるのは、単に社員を監視するためではなく、分断された組織を再接続し、関係性と文化を再構築するための経営判断といえるでしょう。
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