「SaaS買いすぎ問題」深刻 CDP大手・トレジャーデータがAI時代に打つ“次の一手”
「SaaS買いすぎ問題が深刻だ」──トレジャーデータの太田一樹・米国CEOは指摘する。
「SaaS買いすぎ問題が深刻だ」──トレジャーデータの太田一樹・米国CEOは指摘する。
2022年を皮切りに、企業のSaaS費用は減少。使い切れていないライセンス費用を経営課題と捉え、整理する動きが活発化している。トレジャーデータが提供するような「MarTech」(マーケティングとテクノロジーを組み合わせた造語)分野だけでも世界で1万5000社がひしめく。
トレジャーデータは今年「Engage Reform」を掲げ、「SaaS買いすぎ問題によって、つぎはぎになってしまった企業のITの仕組みをリフォームする」支援を強化してきた。
12月2日には、 AIエージェントとマーケティング施策実行機能を統合したマーケティングプラットフォーム「Treasure Data AI Marketing Cloud」の提供を開始。太田氏は「SaaS企業から“脱皮”し、AIネイティブ化しなければならない」と、既存のSaaSの枠を超えたサービス提供の展望を語った。
トレジャーデータのAIネイティブな新機能とは?
2020〜2021年ごろにSaaS導入が急速に進んだ一方で、SaaSツールを“使い切れない”という問題が浮上した。膨らんだライセンス費用を課題に感じる企業が増えている。
生成AIやAIエージェントが急速に広がる中、既存のSaaSシステムを見直す動きもある。
「SaaSはサービスごとに期待している機能が事前に設定してあり、インターフェースからクリック、ドラッグ&ドロップで作業が完了するのが特徴」と太田氏は説明。このクリックの作業をAIエージェントで置き換えられたら、インターフェースは必要なくなると説明した。
AIエージェントがSaaSツールを活用し、業務を遂行する──。トレジャーデータは、そのようなAIネイティブな時代に合わせたサービス開発を強化する。
「Treasure Data AI Marketing Cloud」では同社が提供する「CDP」(Customer Data Platform)にAIエージェントがアクセスし、高度なパーソナライゼーションを実行できる仕組みを構築した。アプリ、メールなど複数のチャネルで、一人一人に最適化したコミュニケーションを提供するという。
新しいマーケティングプラットフォームの提供により、「企業に乱立する複数のマーケティングツール群への依存を解消し、データのサイロ化を防ぐことで、運用コストと工数の削減につなげる」と説明した。マーケティング領域のSaaS買いすぎ問題にメスを入れていく狙いだ。
自社データを持たない企業のAI活用は「効果が薄い」
マーケティング領域では長年、パーソナライズした顧客体験の重要性が語られてきたが、実際は企業内のデータ基盤が煩雑で、実現が難しいことが多かった。
「例えば、企業買収などで機能を継ぎ足してきたシステムはデータや機能がばらばらになりがちで、連携しないデータモデルや整合性のない顧客プロファイルが、予測しづらい運用コストの発生につながっている」(トレジャーデータのプレスリリースより)
同社は「ファーストパーティデータ(企業が自社で保有するデータ)を持たないAI活用は、汎用的で効果の薄いものとなり、真のパーソナライゼーションやROIの向上は実現できない」とし、自社内で顧客データ基盤を整備する重要性を強調した。
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