Suicaや駅ビルの購買データがあるのになぜ? JR東がLINEヤフーと連携するワケ(1/2 ページ)
JR東日本がデータ活用に注力している。Suicaの利用履歴や駅ビル・エキナカの購買データなどを分析だけでなく、LINEヤフーのサービスと連携させることで、LINE公式アカウントでのセグメント配信や、配信後のデータの統合的な分析を実現した。
本記事の内容は、LINEヤフーが11月17日に開催した「LINEヤフー BIZ Conference 2025」内で実施されたセミナー「データで顧客の心を動かす! JR東日本が提供する『個』客体験とは?」の内容を要約したものです。
東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)がデータ活用に注力している。Suicaの利用履歴や駅ビル・エキナカの購買データ分析だけでなく、LINEヤフーのサービスと連携させることで、LINE公式アカウントでのセグメント配信や、配信後のデータの統合的な分析を実現した。
同社がこうしたデータ活用を進める背景には、顧客接点を強化し、顧客体験を向上する狙いがある。データ活用の裏側や施策の成果、今後の見通しを同社マーケティング本部 戦略・プラットフォーム部門 デジタルビジネスユニットの星野知久氏と仲條浩文氏が解説する。
LINEヤフーとの連携 どんな効果が?
LINEヤフーのサービスと連携したことで、特に3つの施策で効果があったという。1つ目が旅行商品プロモーションだ。JR東日本の保有データだけでは、顧客の旅行意向、つまり「旅行したいかどうか」まで把握できないという課題があった。
そこでLINEヤフーが持つ趣味嗜好、旅行意向といったオーディエンスデータを活用し、旅行見込み層をセグメントしてLINE公式アカウントから旅行商品を配信。旅行意向セグメントへの配信は、平均と比べても高い開封率と、クリック率約20%という結果に。「配信後、クリック実績のあるユーザーに再アプローチした結果、開封率71%、クリック率24%という成果が出た」(星野氏)
2つ目がSuicaの利用促進だ。Suicaの平均利用金額・回数の向上を目的に、LINE公式アカウントから、Suicaを30回以上利用したユーザーにJRE POINTが当たるキャンペーンを配信。メッセージを受け取ったユーザーは、会員全体と比較してSuicaの利用回数・金額ともに1.6倍となった。
また、JRE POINTの有効期限が近いユーザーに対し、メルマガ、自社アプリ、LINE公式アカウントなど複数のチャネルから利用を促す配信を実施。LINE公式アカウント利用ユーザーは、非利用ユーザーに比べ、どのチャネルで配信してもポイント利用率が高い傾向が見られた。特にLINE公式アカウントからの配信は、非利用者のメルマガ配信に比べ1.6倍の成果を出した。
3つ目が混雑緩和への取り組みだ。大井町駅では東口・西口改札が混雑する一方、中央口改札は比較的空いているという課題があった。ポスターの掲示や駅員の声かけなどを実施していたものの、行動変容が見られなかった。
そこで、LINE公式アカウントの友だちかつ、Suicaを登録済みで大井町駅の利用実績があるユーザーを抽出し、中央口への誘導メッセージをピンポイントで配信した。その結果、配信直後に48%のユーザーが中央口のみを利用するように移動し、2週間後もそのうち84%のユーザーが行動を継続した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
人件費なんと「年270億円」増加! JR東“本気の人事制度改革”の中身
JR東日本が、人事・賃金制度を大改革する。年間の単体人件費を270億円以上増額し、10年先を見据えた新制度を打ち出した。制度の詳細を広報担当者に聞いた。
女性駅員がデジタル人材に転身 JR西、コロナ禍の“危機感”から始まった全社DXの舞台裏
コロナ禍を経て、「鉄道一本足打法ではダメだ」という危機感を持ったJR西日本。デジタル技術を活用した業務変革に取り組む同社には、駅員からデジタル人材に転身した社員も。同社のDX推進の現場を取材した。
ロート製薬「週休3〜4日制」は“休みを増やすため”ではない 意外な狙いとは?
ロート製薬(大阪市)は10月20日、週3日または週4日の勤務を基本とする勤務制度「ビヨンド勤務」を導入すると発表した。一般的な「週休3〜4日制」かと思いきや、休みを増やすことが目的ではないとう。同社に詳細を聞いた。
月1万4000件の「声」から「不具合」をすぐ特定 バンダイが挑むVoC分析のスピード化
「宝の山」にも例えられる顧客の声(VoC)。だが、日々寄せられる膨大な声を分析し、企業にとって本当に価値ある情報、例えばサービスや商品などの具体的な不具合箇所を迅速に特定するのは容易ではない。商品不具合の迅速な把握を実現したバンダイに、話を聞いた。
