女性駅員がデジタル人材に転身 JR西、コロナ禍の“危機感”から始まった全社DXの舞台裏(1/5 ページ)
コロナ禍を経て、「鉄道一本足打法ではダメだ」という危機感を持ったJR西日本。デジタル技術を活用した業務変革に取り組む同社には、駅員からデジタル人材に転身した社員も。同社のDX推進の現場を取材した。
売り上げの急減など、さまざまな危機を企業にもたらしたコロナ禍。一方、経営の在り方を見直す契機ともなった。鉄道会社もその一つで、特に運輸業の収益比率が高い企業ほど打撃は大きく、「鉄道一本足打法ではダメだ」という危機感が広がった。
こうした中、西日本旅客鉄道(以下、JR西日本)ではデジタル技術を活用した業務変革に取り組んでいる。コロナ禍真っただ中だった2020年10月、同社はグループデジタル戦略を発表し、同年11月にデジタルソリューション本部を発足。「顧客体験」「鉄道システム」「従業員体験」の3つの再構築を掲げ、全社的なDXを推進してきた。こうした取り組みが評価され、経済産業省などによる「DX注目企業2025」にも選出された。
同社のDX推進の現場では、何が起きているのか。駅員から社内公募でDX部門へ異動した野世佳織氏と、DX推進を担当するデジタルソリューション本部 DX人財開発室の古橋絵利氏、宮尾直努氏に話を聞いた。
駅員からDX部門への異動を決意
野世氏は2006年、JR西日本に入社。10年以上にわたり駅員業務に従事してきた。転機となったのはコロナ禍だ。「現場の仕事は激減しました。予定外の余暇で、自分自身のキャリアと向き合った結果、『これまでの現場での経験を生かして、もっと幅広い分野で鉄道事業に貢献できないか』と考えるようになったのです」(野世氏)
野世氏は同社の社内公募制度を活用して、以前から興味のあったシステム部門の選考を受けることに。課題や書類選考、面接を経て、2023年10月に現在も籍を置くシステムマネジメント部への異動が決まった。
部署が変われば、求められる知識やスキルは大きく異なる。特にシステム関連の部門への異動となると、新たに身に付けなければならない専門的な知識やスキルも多いだろう。通常の駅員業務もある中、野世氏はどうしたのか。
「現部署への異動が決まる前から、IT関連の書籍を読んだり、オンライン学習サービスを活用したりして学習を進めていました」。野世氏が活用した学習リソースは多岐にわたる。例えば、YouTubeでIT資格取得の勉強法を調べ、そこで紹介されていた書籍を購入。その他にも、SNSでの情報収集や、ショート動画を活用した隙間時間での学習も欠かさなかった。また、同社では社内向けのオンライン学習サービスを提供しており、それも活用したと話す。
そうした努力の結果、念願だったシステムマネジメント部への異動が決定。異動後、野世氏は社内で利用する各種システムや、従業員向けアプリの企画・運営などを担当している。
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