なぜフジテレビは失敗し、アイリスオーヤマは成功したのか 危機対応で見えた「会社の本性」:【2025年メガヒット記事】(7/7 ページ)
吉沢さんのCM継続を発表したアイリスオーヤマに、SNSで称賛の声が上がっている。危機管理対応としては契約解除が「正解」とされることが多いが、なぜ同社はこのような“神対応”ができたのか。その理由は……。
フジテレビも学ぶべき「ユーザーイン発想」
今回の中居さんの「トラブル」の対応がいかにマズいのかというのは、「ユーザーイン発想」をすれば明白だろう。生活者の中には、会社に命じられて嫌な取引先の社長の隣に座らされてお酌をさせられたとか、下心のありそうな社長と一緒に2人だけで飲みに行かされたなんて話はゴロゴロあって、中には、そのような「トラブル」で心に深い傷を負った生活者もいる。
警察に相談しようと思っても「みんなに迷惑がかかるから大事にするな」「警察なんかに言っても傷つくのは君のほうだぞ」なんて上司から説得されて、怒りや悲しみを無理に抑え込んだという生活者もたくさんいる。
このような生活者目線に立てば、中居さんの「トラブル」が先ほどの吉沢さんのように「今度から気を付けてください」で済む話ではないことは明らかだ。
フジテレビには「挑戦と理念」という立派な経営理念があるが、よくよく読むと「信頼できる情報を発信します」「文化・教育・環境など多様な分野に貢献します」「自由闊達(かったつ)な職場をつくります」と、自分たちの一方的な思いだけしか掲げられていない。視聴者あってのテレビなのに、である。
厳しい言い方だが、一般企業が掲げる「お客さま第一主義」もなければ、アイリスオーヤマのような「生活者になりきる」という姿勢もない。自分たちが考える「信頼できる情報」を発信してやっている、という「上から目線」なのだ。
人間でもそうだが、こういう「本性」のある企業というのは、語る言葉の端々に生活者を小ばかにした感じや、生活者とかけ離れた非常識さがにじみ出てしまうものなのだ。
もはや手遅れの感もあるが、フジテレビ幹部の皆さんは、アイリスオーヤマから「ユーザーイン発想」を学ばせてもらったほうがいいのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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