20年連続で売上減少 組織崩壊の危機にもあった、老舗缶メーカーの「V字回復」の裏側(5/5 ページ)
1906年創業の老舗缶メーカー「側島製罐」は20年連続での売上減少と雰囲気の悪い組織という苦境に立たされていた。同社を継いだ6代目の改革によって、V字回復とチームワークの改善が見られたが、どのような改革があったのか。舞台裏を取材した。
「違う会社になった」
さまざまな改革を経て、側島製罐は生まれ変わった。その雰囲気は顧客にも伝わっているという。
「『違う会社になりましたね』と言われるようになりました。例えば、お客さんが工場とかに来られた際にみんな顔上げて笑顔で挨拶するんですよ。『宝物を託される人になろう』というビジョンを設定したと話しましたが、顧客にとっての宝物の一つである商品を任せられる会社・工場になっているかどうかを、各々の社員が判断し行動する意識が定着していると感じます」
石川氏は最初の1年は工場パトロールなどを頻繁に実施していたが、現在は顧客を案内するときに工場の中に入る程度でパトロールやチェックなどは一切行っていないという。当初は「代表が来る日だからちゃんとしよう」という意識が社員側にあったようだが、現在は社員が会社を良くしようと自発的に動いており、認証制度を取得したりプロジェクトを立ち上げたりしているという。
各々がミッション・ビジョン・バリューという判断軸を持って自走するようになったことで、組織は新しいステージに進んだ。会社を継続的な成長路線に乗せるためには、今後どのような課題が露出しそうか。
石川氏は「最近『そばじま3.0』になろうという話をみんなでしています」と話す。1.0は個人も組織も疲弊していた昔の姿、2.0はみんながミッション・ビジョン・バリューを大事にしながら、認め合ったり挑戦を応援したりする状態を指す。
「現在はチームワークを重視するあまり、その関係性を壊さないような力が働いてしまっている部分があると思います。言うべきことを言い合ったとしても、関係性が崩れない対話をするスキルを身に付けたり、伝え合ってお互いのレベルを上げて行ったりするステージに行こうと話しています」
側島製罐は、長年の売り上げ減少と組織の分断に直面しながらも、対話を増やし改革を進め、新たな組織に生まれ変わった。ただし、改革はゴールではない。これからは「そばじま3.0」に向けて、関係性を壊さずに言い合える力が求められるフェーズに入る。伝統企業はどのように次の成長曲線を描いていくのだろうか。
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