20年連続で売上減少 組織崩壊の危機にもあった、老舗缶メーカーの「V字回復」の裏側(4/5 ページ)
1906年創業の老舗缶メーカー「側島製罐」は20年連続での売上減少と雰囲気の悪い組織という苦境に立たされていた。同社を継いだ6代目の改革によって、V字回復とチームワークの改善が見られたが、どのような改革があったのか。舞台裏を取材した。
報酬は自分で決める 側島製罐の面白い人事制度
組織改革を進める中で、新たに人事制度も確立した。中でもユニークなのが「自己申告型報酬制度」だ。社員は今後半年間の業務内容と希望給与額を宣言する。宣言に対し、社員と投資委員会というチームが業務の実現可能性や報酬の妥当性を議論し、最終的な報酬額を決定するという仕組みだ。
この制度は石川氏の違和感から生まれた。「ミッション、ビジョン、バリューを策定したことで、みんなが今までにないくらい目を輝かせて仕事して、仲良くなって、頑張っている。これまで『怒られないように仕事しよう』『余計なことをしないようにしよう』と他人軸で仕事をしていた社員が、ようやく自分たちが作った軸を指針にオーナーシップを持って仕事をし始めた。その中に評価制度が組み込まれたら、そっちを見て仕事をしてしまうのではないかと思ったんです」と話す。
報酬に対してスキルや業務内容が不足している場合には「もっとこういうことをしたら理想の報酬に近づけられるよ」と提案する。逆に「もっともらったほうがいいよ」というアドバイスをすることもあるという。
申告は半年に1回。直近では2025年9月に実施したが、人件費は年間600万〜700万円増の見込みだという。社員自身が仕事の役割と報酬を決める仕組みは、彼らが会社の現在地や自身の仕事の価値に向き合い、そこから当事者意識を持ってどのように改善していくのか、その姿勢を育む機会になっているように見える。
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