倒産寸前なのに年収100万円アップ 売上38億円のV字回復を実現した、山梨のプリント企業の「決断と狙い」(2/5 ページ)
Tシャツなどのオリジナルプリントグッズの製作を展開するフォーカスは2020年のコロナ禍、倒産の危機に陥った。しかし現在はV字回復を果たし、売り上げは約38億円に上る。この5年間、どのような戦いがあったのか?
売り上げ9割減で「100%倒産する」 覚悟の7億円投資
2020年にコロナ禍でイベントの中止が相次ぎ、フォーカスの売り上げは9割減となる9億5000万円まで落ち込んだ。赤字は億単位に膨らみ、債務超過は避けられない状況だった。
「100%倒産すると思っていました。可能性ではなく、ああ、倒産ってこうやって現実になるんだと」
社員も続々と離れていった。1年半で入れ替わりを繰り返し、全社員数に当たる計40人が退職した。常松氏は当時の取締役3人に対し、一度役職を外れてもらった。取締役は雇用保険の対象外のため、会社が倒産しても失業給付を受けられない。せめて社員として半年在籍すれば、受給資格が得られる。そこまで会社が持つかは分からなかったが、できる備えはしておきたかったという。
政策金融公庫から新型コロナウイルス感染症特別貸付(通称、ゼロゼロ融資)で約3億円を調達し、一息つくことはできた。しかし10年返済で年間3000万円の元本返済が必要になる。「純利益で3000万円を新たに生み出さなければ、また行き詰まる。最低でも5年で売り上げを倍にしないと、借入負担を吸収できないと考えました」
そこで常松氏が注目したのは、市場全体の動きだった。「中古業者に大量の設備が集まっているという情報をつかんでいました。同業者が現金化のために売っているということは、市場全体で生産リソースが急速に縮小している。需要が少しでも回復すれば、供給が追いつかなくなる。その需要を取れば一気に反転できる」――同氏はその一点に賭け、調達した資金をカラープリント設備への投資に振り向けた。
モノクロ中心だった生産体制を刷新し、単価と粗利率の向上を狙う戦略だ。設備投資額は当時から3年間で約7億円に上った。
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