2015年7月27日以前の記事
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「正直、何を言ってるのか──」 SmartHR社長が斬る“SaaS is Dead”論の致命的な勘違い(3/4 ページ)

登録企業数7万社超、従業員データ数で国内最大級の人事プラットフォームを築いてきた同社は、2025年を「AI活用の本格化の年」と位置付ける。業界では「SaaS is Dead」論が喧伝され、AIがSaaSを不要にするとの見方も広がる中、エンジニア出身の経営者が、SaaSの内側で10年を過ごしてきた視点から語るAI時代の生存戦略とは。

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モートはどこにあるか

 AIの台頭によってSaaSの差別化ポイント、いわゆる「モート」が崩れるのではないか。こうした懸念に対し、芹澤氏は「そんなに変わらない」と見る。

 UIがAIに置き換われば「使いやすさ」というモートが崩れる。AIがSaaSにアクセスする形が主流になればシート課金モデルが崩れる。ビジネスロジックもAIで簡単に作れるようになれば差別化が難しくなる。こうした指摘はあるが、芹澤氏の考えは異なる。「独自のデータを持てないSaaSは勝てないというのは、AIが登場する以前から言われていたこと。AIによってそれが加速しただけだ」

 芹澤氏はSalesforceを例に挙げる。商談を音声で記録するCRMを作ったとして、それでSalesforceを駆逐できるか。Salesforceの強みは顧客データの管理だけでなく、周辺のエコシステムにある。入力方法が音声に置き換わっただけでは、その強みの一部しか代替できない。

 SmartHRが築こうとしているモートも同様だ。従来の業務ソフトはバックオフィスの担当者だけが使うものだった。だがクラウドネイティブのSmartHRは、全従業員がアクセスできる。「管理者だけでなく全従業員がSmartHRを使って、より良く働ける世界を作る」。これが芹澤氏の描くエコシステムである。

 では、何がスイッチングコストになるのか。芹澤氏は「業務フロー」だと答える。バックオフィスの業務は変えるのが大変だ。従業員からすれば「なぜコロコロ変えるのか」となるし、管理部門もルーチンで処理したい。AIで問い合わせができるようになれば、その方法を変えたくなくなる。見た目のUIではなく、業務フローに組み込まれることが真のモートになる。

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SmartHR 芹澤社長の視点(Geminiにて作成)

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