2015年7月27日以前の記事
検索
コラム

情報戦化するテーマパーク 利便性向上のはずが不満の声も、公式アプリが抱える「ジレンマ」(1/3 ページ)

テーマパークが情報戦化している。アプリ活用と事前の情報収集がないと、十分に楽しめない場所になってしまっていないか。テーマパークの公式アプリが抱えるジレンマを考えてみよう。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

 テーマパークなどのアミューズメント施設において、チケット購入からアトラクション予約まで、スマートフォンで入場前の手続きを完了させることが増えてきた。

 来場者の利便性向上を狙った施策であるにもかかわらず、SNS上では不満の声も多々見られる。なぜ好意的に受け入れられないシーンを多く目にするのだろうか。

当たり前になりつつある、エンタメ施設の「アプリ活用」 不満の声も

 2025年11月19日、東京ディズニーリゾートのアプリをめぐるXの投稿が6600いいね、1700リポスト、380万インプレッションされ、話題を呼んだ。内容としては、11月15日にアプリで不具合が発生したことに対する補償の有無を東京ディズニーリゾートに問い合わせたものだ。


東京ディズニーリゾートのアプリをめぐるXの投稿が話題になった(画像:Adobe Stockより)

 回答とされるスクリーンショットでは、システム不具合により一部機能が利用できなかったと謝罪する一方で、約款に基づき、アプリのシステム不具合によるパークチケットなどの代金の返金や代替サービスの提供を行わないという旨が記載されている。

 上記以外にも「ディズニー アプリ」などと検索すると、通常時から「園内でずっとスマホを見なければならない」「操作に戸惑った」といったネガティブな声は多々見られる。

 最近では、アプリ活用を前提にしているテーマパークも少なくない。7月に開業したジャングリア沖縄も、公式Webサイトの事前準備ガイドで、アプリを「当日のパーク体験に必須!」と紹介している。整理券の抽選応募や、アトラクション体験の同意手続は全てアプリで行うため、不可欠な存在となっている。


ジャングリア沖縄も当日のパーク体験にアプリ活用が必須としている(画像:ジャングリア沖縄公式Webサイトより)

 振り返れば、今年開催された大阪・関西万博も、スマホ利用が前提となるイベントだった。一応当日来場でも楽しめる体裁は取っていたものの、人気パビリオンはスマホやPCなどでの事前予約が必要。しかも、その予約も開始直後に埋まってしまい、当日ふらっと訪れるような楽しみ方はなかなか難しい状況だった。


大阪万博でもアプリ利用を推奨している(画像:EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイトより)

顧客体験の向上につながっている?

 このようにエンタメ施設やイベントでは、いまや事前情報を制した者が、当日の体験を制するような状況になっている。確かに来園者にとって、行列に並ばなくていいのはメリットだ。当日の予定を組みやすくなるのも利点ではある。

 前もって予約さえできていれば、そのルートをたどるだけで、1日を楽しく終えられる。準備段階で多少のストレスがあったとしても、それを上回る興奮や感動を得られるのだ。テーマパーク側としても、「実際に体験してもらえば、きっと楽しんでもらえる」といった思惑は多少なりともあるだろう。

 また、運営サイドには、顧客体験を向上させようとする意図もあると考えられる。待機列に長時間並ぶことで、せっかくの休日が無駄になったと感じた経験を持つ人は多いだろう。そこに対する解決策として、デジタル化による効率性を盛り込むことは合理的な考えだ。

 加えて、コロナ禍もアプリ活用が加速した。感染防止策としてソーシャルディスタンスが当たり前となり、行列を作らないことが「新しい生活様式」となったためだ。感染拡大の収束とともに、かつての人混みは復活しつつあるが、やはりスマホ予約に安心感を覚える利用者も少なくないだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る