情報戦化するテーマパーク 利便性向上のはずが不満の声も、公式アプリが抱える「ジレンマ」(2/3 ページ)
テーマパークが情報戦化している。アプリ活用と事前の情報収集がないと、十分に楽しめない場所になってしまっていないか。テーマパークの公式アプリが抱えるジレンマを考えてみよう。
便利なはずのアプリ導入が「裏目」に出るワケ
ここまで見てきたように、体験と衛生の両面から、あくまで顧客ファーストの施策として導入されたと考えられるが、現状ではデメリットもそれなりに大きい。運営側が「客のために」と、良かれと思って行っている施策にもかかわらず、裏目に出ているように感じられてしまうのだ。
その原因として考えられるのが「娯楽体験が一貫していない」という点だ。体験の途中でリアルに引き戻されてしまうのは、世界観を売りにしているテーマパークにとって、本来であれば死活問題だろう。
例えばチケット購入は、かつて入場ゲートで行うことが主流だった。多くの施設では、最寄り駅からゲートまでの通り道に、キャラクターをあしらったり、関連するデザインにしたりといった装飾を施している。
そうした空間は、ただの通路でなく「気分を高めるためのムードづくりの場」として機能する。すると、チケット購入という単なる商取引にもかかわらず、1つの体験として成立する。しかし現在のスマホアプリなどのUI(ユーザーインターフェース)では、そうした雰囲気の醸成が、まだ不十分に感じるのだ。
一度でも現実に引き戻されると、世界観の一貫性が損なわれてしまう。アミューズメント施設の醍醐味(だいごみ)は、非日常を味わえることにある。それが寸断されてしまえば、本来得られるはずだった娯楽体験も薄らいでしまう。
そう考えると、チケット予約や整理券配布といったアプリ上での事務的な作業についても、ただキャラクターをあしらうだけでなく、世界観を取り込み、「アプリ上の予約操作からエンタメが始まっている」と感じさせるようなトータルコーディネートが重要になる。
1日中スマホを使いつつ、帰宅まで充電を持たせるためには、別途モバイルバッテリーを用意する必要に迫られる場合もある。これもまた「ここは本当に夢の国なのか」と感じさせる要素だ。そうしたノイズを排除できるほどの、圧倒的な演出が求められるだろう。
大切なのは、事前の情報戦で利用者を疲弊させないことだ。アトラクションやショーを楽しむ余力がなくなってしまえば、来た意味もなくなってしまう。また、現地で興味を持ったが乗れなかったアトラクションや時間的に見られなかったショーがあったとして、それが「次回また来たくなるモチベーション」につながればいいが、その手前に「予約の壁」が立ちはだかれば、再訪そのものを考え直すかもしれない。
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