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情報戦化するテーマパーク 利便性向上のはずが不満の声も、公式アプリが抱える「ジレンマ」(3/3 ページ)

テーマパークが情報戦化している。アプリ活用と事前の情報収集がないと、十分に楽しめない場所になってしまっていないか。テーマパークの公式アプリが抱えるジレンマを考えてみよう。

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アプリが抱える「現実に引き戻される」以外のデメリット

 実社会で日常的に使われるツールであるスマホと、アミューズメント体験が密接に関わっている現状では、「現実に引き戻される」ことに加え、「風評の拡散」という運営企業側にとってのリスクも見逃せない。

 スマホを起点とした「情報戦」は、体験への評価が、そのままSNSの風評として流れ出す構造を生む。冒頭で紹介したような、ディズニーアプリの不具合を報告するポストは園内から投稿されたと思われるものも少なくない。常にスマホを手にしているからこそ、気になったことを即座に投稿できる。それがポジティブな内容であればいいが、不平や不満も気軽に拡散できてしまうのだ。

 そして、ひとたびネガティブな投稿が出ると、運営サイドではコントロールできない。SNS炎上の多くは、感情をベースにした投稿がきっかけになる。「理屈が通っているか否か」ではなく、「快か、不快か」の軸で判断されがちなため、負の感情によるポストはバズりやすい。また、そうして付いた風評は、なかなか払しょくできない。


アプリでの体験がそのまま風評としてSNSで共有される(画像:ゲッティイメージズより)

 このように、アミューズメント施設が、その各種手続きを“スマホ頼み”にすることには、あらゆるハードルが存在する。当然ながら、これだけデジタル社会になってなお、「スマホを使わない紙ベースに戻せ」と言うのは時代錯誤だ。

 となれば、ほどよいバランスが重要になるわけだが、そこで大切なのは、利用者を失望させないこと。しっかりと「アプリを使う必然性」や、世界観を損なわない操作性が伝わらない限り、このような来園者とテーマパークのすれ違いは今後も続く。

 SNSで可視化されている不満は、その一例に過ぎない。そのまま放置してしまえば、体験価値そのものよりも、「準備が大変」といった評価を受け、足が遠のく場所になってしまう可能性もあるだろう。

著者紹介:城戸譲

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1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ニュース配信会社ジェイ・キャストへ入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長、収益担当の部長職などを歴任し、2022年秋に独立。現在は「ネットメディア研究家」「炎上ウォッチャー」として、フリーランスでコラムなどを執筆。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。


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